LayerXで見えたtoBマーケティングのおもしろさ
──鋤柄さんは現在LayerXでどのようなミッションを担っていらっしゃるのでしょうか。
鋤柄:バクラクシリーズと呼ばれるSaaS+Fintechのサービス群と、法人カードのサービス「バクラクビジネスカード」をあわせた、バクラク全体のマーケティング責任者をやっています。
──業務委託でのご経験を含めると、LayerXのマーケティングに携わり始めてから1年ほどになりますが、これまでどんなことに取り組まれてきましたか。
鋤柄:業務委託でテレビCM施策のプロジェクトを実施した際は、CMを打ってその結果を検証するまでが仕事でしたが、社員として入社してからは、かなり幅広くやっています。新規リード獲得や商談獲得がメインのミッションなので、それにつながるマーケティング施策を10名ほどのメンバーと一緒に展開しています。
──鋤柄さんというと、やはりメルカリ時代のtoCのマーケターとしての印象が強いかと思います。C向けのアプリマーケティングから、B向けのSaaSマーケティングへキャリアチェンジされて、どんな違いやおもしろさを感じられていますか。
鋤柄:たとえば業務委託のときから感じていたのは、マーケティングの施策の幅が広いということ。特に、チャネルの数がC向けよりも多いですね。
というのも、C向けであれば、広告運用などのデジタルマーケティングと、テレビCMなどのマスマーケティングの二つのチャネルが主になります。一方、B向けのマーケティングは、デジタル広告運用やCMもありつつ、さらに展示会やセミナー、ホワイトペーパーなど、チャネルの幅が広い。C向けのマーケティングをやっているだけでは経験できない施策を考えられるのは、おもしろいし、自分のキャリアにもプラスになると思いました。

鋤柄:もう一つ明確に違いを感じるのは、リードタイムの長さです。C向けのサービスなら、アプリのダウンロードから初回購入までのリードタイムは、早ければ当日で長くても3日〜1週間です。短期間で成果が見えてくるので、データドリブンにマーケティングを回していける点がC向けのおもしろさであり、やりがいだと思います。
一方B向けのマーケティングでは、新規リードの獲得から初回商談、トライアルを経て最終的な成約までには、1ヵ月から長い場合には半年かかる場合もあります。その間に、広告運用やセミナーなど様々なチャネルでアプローチする。なのでチャネルの効果の可視化は、難易度が高いですね。リードタイムが長い分、データだけでは判断できない部分もあり、定性的な判断も必要になる点が、B向けの特徴であり、おもしろさだと思います。
──チャネルが増えてリードタイムが長くなると、テレビCMやデジマまわりの戦略も変わりますか。
鋤柄:テレビCMは目的次第で、C向けB向けに関わらず違いがあると思います。たとえばメルカリの場合、初期のテレビCMの目的はユーザー獲得で、インストール単価(CPI)からキャンペーン効果を計っていました。ただフェーズが進むと認知率や第一想起へと指標を切り替えていった。
B向けでも短期的なダイレクトマーケティング的な指標を立てることもあります。また、採用向けのテレビCMを打っているBtoB企業もありますよね。そういった目的に合わせてCMの施策の設計や目標は変わってきます。
toC/toBもマーケティングの概念は変わらない
──B向けのマーケティングを行う際、C向け時代の経験が生きている部分はありますか?
鋤柄:もちろんあると思います。C向けでもB向けでもマーケティングの概念自体は変わりません。B向けのマーケティングと言っても、ある企業で働く個人にアプローチしていくので、チャネルの数や方法が異なるだけで、考え方は本質的には同じ。C向けの経験しかないからといって、toBマーケに太刀打ちできないわけではないと思いますね。
個人的には、toCからtoBのキャリアチェンジをするマーケターが増えていくと、マーケティング業界の人材の流動性が高くなって、良い影響があると思っています。
──C向けのサービス企業に入ったら、ずっとC向けのマーケティングをやっていくという固定観念がありますよね。
鋤柄:そうですよね。僕もLayerXの仕事をするまでは、そのイメージがありました。でもいざB向けのマーケティングをやってみると、概念的には一緒でしたし、チャネルの幅が広がるという意味で自分の成長にもプラスがあるだろうという考えが強くなりました。