テクノロジーの可能性を最大化するためにできること
──テクニカルディレクターに入ってもらうとき、企業側が気を付けるべきことはありますか?
まずは、なるべく早めに、できればプロジェクトのスタート時から呼んでほしいという点があります。企画と予算が決まった状態で「できますか?」と相談されても、「はい/いいえ」でしか返せないんです。そうなるとお互いに困ってしまうので、「予算がこれくらいなら、こちらのほうがいいですね」とか「そこまでお金をかけずとも、こういう方法もあります」と調整しながら進められるように、ぜひ最初から呼んでいただきたいです。
あとは、依頼主側の主体性も大事です。新規事業を立ち上げるとき、開発も運用も丸ごと我々に投げると2〜3倍は費用がかかるので、一般的な事業会社の場合そもそも利益率の観点から事業が成立しません。最終的には我々が必要なくなるくらいのスタンスでいるのが理想で、我々もクライアント社内でディレクションできる人が出てくるように、情報や知見を共有しながらプロジェクトを進めるようにしています。課題や会社の優位性など社外からは見えない部分もありますから、「テクニカルな部分はわからない」ではなく、自分ごととして主体的に判断をする姿勢を大切にしてほしいですね。
その意味では、「これはどういうことですか?」など、細かい技術の話でもどんどん質問したほうがいいと思います。
──こんなことまで聞いていいんだろうか? と思う方も多そうです。
いえ、どんどん聞いてください。マーケティングとテクニカルディレクションのノウハウが交わるところに商機があると思うので、お互いに守備範囲を広げながら、うまくいきそうなところを探すことが大事だと思います。
──とはいえ、依頼時にある程度の知識レベルが求められる気がするのですが、いかがですか?
もちろん、テクノロジーに関する知識はあるに越したことはなく、マーケターのみなさんにおいても情報収集は大事だと思いますが、それ以上に課題や目的が明確であることのほうが重要です。その相談相手としてテクニカルディレクターがいて、開発・実装・運用に至らなくても、ただ相談だけをすることも可能なんです。弁護士の相談料と同様に、時間単位で相談を受けるケースも増えてきていて、そういった使い方をしてもらうのはむしろ大歓迎ですね。
──最後に、TDAとBASSDRUMの展望をお聞かせください。
まずは、広告業界に限らず様々な業界でテクニカルディレクションに携わっている人たちを我々のコミュニティに巻き込んでいきたいです。これに加え、非技術者への広がりも重要です。最終的には、企業の人事制度に入り込むくらいになる必要があると思っているので、より多くの人がテクニカルディレクションを使える・学べる状態を目指して、引き続き情報発信をしていきたいと思っています。