※本記事は、2022年11月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)83号に掲載したものです。
【特集】Web3、メタバース、NFT──最新技術がマーケティングに及ぼす影響
─ 「web3とは何か?」をビジネスの文脈で理解する──企業が捉えておくべき変化
─ メタバースで消費行動・ビジネスはどう変わる?仮想空間で問われる「サービスの本質的な価値」
─ “共創”で目指すメタバースの実現。Metaのメタバース事業の現在地、マーケティング活用の可能性とは
─ メタバースの本質は「放課後」のような居心地の良い場所作り
─ たとえば、こんなこともできるはず! 現時点で考えられるマーケティング×NFTの選択肢
─ 広告業界ではもはや常識に。テクノロジーの最適活用に不可欠な「テクニカルディレクター」とは(本記事)
現代のキーパーソン「テクニカルディレクター」とは?
──はじめに自己紹介からお願いできますか。
テクニカルディレクターを中心に組成されているBASSDRUM(ベースドラム)でテクニカルディレクターとして活動しています、森岡です。私は大学で工学部を専攻し、目の研究をしていました。博士課程を満期退学し、京都のメーカー企業で研究開発職に従事した後、広告制作会社に転職。そこではプロジェクションマッピングなどデジタルテクノロジーを使ったイベントの企画や、IoTデバイスの開発などを担当していました。BASSDRUMに参画したのは約3年前で、同じタイミングで一般社団法人のテクニカルディレクターズアソシエーション(以下、TDA)を立ち上げ今に至ります。これら本業に加え、大学での講義やアーティスト活動もしています。
──メンバーの8割以上がテクニカルディレクターであるBASSDRUMが設立されたのが2018年です。BASSDRUM設立の経緯に絡めて、「テクニカルディレクター」という職業がどのように出てきたのかを教えてください。
私も広告制作会社にいたので経験しましたが、一時期、総合広告代理店経由のWeb制作やデバイス開発の相談・依頼がすごく増えたことがありました。これは、総合広告代理店が自身の提供領域を拡大させていく中で、デジタルテクノロジーを使う部分が大きくなっていたことに起因すると認識しています。その中で、たとえば、Webサイトの制作担当者に「アプリも作れる?」という依頼がきたり、「水族館のイベントでプロジェクションマッピングを使いたいんだけど、何か提案できないかな?」という相談がきたりするようになりました。そうして、雑多にいろんな技術を使って“いろんなものを作る”、いろんな技術を“幅広く薄く使う”ような技術者が非常に増えていったんですね。ここまでが大体2015年前後の出来事です。
そこから、エンジニア的にただ作る・実装するだけではなく、どうやったら作れるか(実現できるか)を企画の段階から考えることの重要性が認識されるようになりました。この部分を制作・実装・開発と切り分けて「テクニカルディレクション」と呼ぶようになり「テクニカルディレクションを専門的にやる人=テクニカルディレクター」が出てくるようになったという流れです。
──「テクニカルディレクター」と認識されていなかっただけで、ずいぶん前から広告やマーケティングに近いところで活躍されていたんですね。
そうですね。私の場合は、広告・マーケティング領域から入っていきましたが、テクニカルディレクションのカバー範囲は広告制作の領域のみに留まるものではありません。実際に新規事業開発など請け負うプロジェクトの幅は広がっていたので、「テクニカルディレクションの価値をもっと発信していくべきでは」という話になり、BASSDRUMが立ち上がっています。
──テクニカルディレクションは、あらゆる業界に共通する概念なのですね。ちなみに、BASSDRUMでは「テクニカルディレクター」という職業をどのように定義していますか?
まず「テクニカルディレクション」の定義としては、「技術選定、技術翻訳、仕様設計」といった言葉をよく使います。もう少し平たく言うと、「技術の言葉を技術以外の言葉に翻訳する仕事」がテクニカルディレクションで、これを専門的に行う職業がテクニカルディレクターです。