マイクロソフト広告のフルファネル型アプローチ
安成:マイクロソフトは、2019年にリテールメディア広告システムのPromoteIQを、2021年に広告プラットフォームのXandrを買収し、さらに2022年7月にはNetflixとの提携を発表しました。着々とマイクロソフト広告のエコシステムを確立している印象ですが、広告主企業がMicrosoft広告を使ってどのように顧客にリーチできるか、一連の流れをうかがえますか?
有園:認知からコンバージョンまで、フルファネル型のアプローチを可能にしています。具体的には、ファネルの上部から下部に至るまでのMicrosoft Edgeを軸に、たとえばNetflixはブランディングとして位置づけています。Xboxへの広告配信も、具体的な広告プロダクトとしてはこれからですが、ここに入るでしょう。
次に、理解検討・エンゲージメントの段階では、MSNなどの媒体を束ねたMicrosoft Audience Network、Xandr、LinkedInが有効です。そして最後の行動・CVには、直接的な後押しとしてBingやPromoteIQが位置します。

安成:Microsoft Edgeは全体に有効ということですね。
有園:そうですね。PCを中心にEdgeの利用が広がれば、このファネルがカバーするユーザー数もそれだけ増えることになります。
また、FacebookとMicrosoftは、メタバース領域でのパートナーシップを発表しているのですが(参考:「Microsoft Details Metaverse Partnership With Facebook」)、メタバースやゲーム内広告なども視野に入れているため、マイクロソフトがカバーしようとしている範囲は、Google、Amazon、Metaと比べて明らかに大きいと思います。それを実現するベースとなるのが、Microsoft Edgeです。
CVRとRPMが向上する世界を目指して
安成:そして、ユーザーがEdgeを使うほどMicrosoft Rewardsでポイントが貯まって、Amazonギフト券などに換えられると。Amazonへの送客とも捉えられますが、それは織り込み済みなのでしょうか。
有園:はい。前提として、マイクロソフトは企業のミッションに「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」と掲げています。なので、リワードの形でユーザーに還元し、エンパワーメントしながら、パートナーであるAmazonも同様に後押しすることは矛盾していません。
同時に、ポイントでユーザーがAmazonで買い物をすると、つまりCVRが上がりますよね。そうするとRPM(Revenue per Mill)という、媒体側から見たCPMにあたる指標も改善します。日本はCPM、RPMが欧米に比べて低いので、その改善はGoogle時代からの私のテーマでもありました。
安成:RPMが向上すると、媒体社はよりよいコンテンツ制作に投資できますね。
有園:はい。また、それはもちろん生活者への還元になります。
広告主には、おそらく世界トップレベルで有しているファーストパーティ・データを利用して、よりよいターゲティングを提供して広告効果を引き上げながら、オーディエンスの数や層を広げていきます。広告主と我々の間に立つ広告会社は、同じクリエイティブならよりCPMが高い枠に配信するほうがいいですから、CPMを高めることで還元していく。そして、広告事業でいただいた我々の利益をまた生活者に還元していく、という循環を描いています。
