プラットフォーマーで異なるCookie対応
Cookie規制が強化され、サードパーティCookieがほとんど利用できなくなるなりつつある今、アドテクノロジー業界にとっては悩ましい状況だろう。齋藤氏は、本質的な対応を行うために、まずは消費者側の意識を理解し、業界ごとの現在地を把握するべきだと語る。
現在地に言及する前に、まずはサードパーティCookieが規制されることになった背景から整理した。
「まず1つは、GAFAが力を持ったことです。オンラインの行動データを活用し、広告事業で圧倒的なポジションを築き上げました。しかし、その行動データはプラットフォームのものではなく個人のものだとする見解が欧州を中心に広がり、法的規制に発展していきました。
従来のデジタル業界は基本的にはオプトアウトを前提としていましたが、そうした潮流によって個人のデータを活用する際には事前の許諾を取得するオプトインが一般的になってきました」(齋藤氏)
そのような動向に、各プラットフォームはどのように対応しているのか。
Appleの場合、広告事業主体のビジネスモデルではないため、他社に比べて積極的に個人情報保護の機能を強化している。2017年からSafariにトラッキングを防止するITP(Intelligent Tracking Prevention)機能が実装され、iPhoneの初期設定でオンにされている。つまり、ユーザー自身がオフに設定しない限りトラッキングできないため、Safari上ではサードパーティCookieはほぼ取得できない状態になった。
Googleは、2024年後半からGoogle ChromeのサードパーティCookieを廃止する予定だ。ただ、Googleの場合は代替ソリューションとして、プライバシーを保護しながらターゲティング広告の配信を実現する「Privacy Sandbox」の提供を開始している。
生活者がデータ活用・パーソナライズ広告に対して持つ意識
インターネットユーザーのプライバシー保護を強化する目的で推進されているCookie利用の規制だが、そもそも日本のユーザーは企業が個人データを活用している状況をどう捉えているのか。齋藤氏はマクロミルが2019年から3ヵ月に1度のペースで実施している、デジタル広告に関する意識調査を引用して傾向を解説した。
調査結果によると、「自分のパーソナルデータがプラットフォームに提供されている」と認識しているのは60%。また「パーソナルデータがビジネスに活用されていると認識している」との回答は59%にのぼった。
では、パーソナライズされた広告への好感度はどうだろうか。最多の回答は「どちらともいえない」で48%だった。
「判別の難しい結果が出ました。ただ、不快と感じる方が多いものの、提供されるサービスの質と引き換えならばしょうがないか、と思われている方も少なくありません。提供サービスの品質とプライバシー侵害の不安感、このバランスが崩れるとデジタルマーケティングが成立しづらくなるので非常に重視するべきポイントです」(齋藤氏)
調査結果をもう少し深く見ると、世代ごとに捉え方が変化しているのが見て取れるという。特に15〜34歳の男性は、デジタル広告に対してあまり不快だとは感じていない。同年代の女性は、男性よりも割合は少ないものの、若い世代の方があまり不快だと感じていないという傾向は同じだ。デジタルネイティブの世代はパーソナライズされた広告に慣れており、利便性の高さを重視しているようだ。
一方で、広告やデータ提供を拒絶している生活者も一定数はいる。マクロミルが実施したアドブロックの実態調査によると、アドブロック関連のアプリ保有率は、2019年から2022年にかけて約2.5倍に伸びていることがわかった。統計から推測すると、約400万人がアドブロックを利用していると考えられるという。10〜40代の男性の利用が進んでおり、特に学生が多いようだ。