BtoBtoCのミルボンがEC+ライブコマースに挑戦した狙い
続いて、ミルボンの取り組みについて蓑原氏が解説した。ミルボンは、ヘアカラー剤やシャンプーなどを中心としたヘアケア商材を販売している、美容室専売品の総合メーカーだ。
前述の通り、ミルボンの商品は基本的に美容室専売品であり、流通は共同パートナーである販売代理店の協力を得ている。BtoBtoCモデルのビジネスを行う同社が、なぜライブコマースに注力しているのか。背景として蓑原氏が触れたのは、美容室に来店した顧客向けの公式オンラインショッピングサービスを展開している『milbon:iD』だ。
同サービスは、美容室がプラットフォーム上に出店し、会員登録した顧客が購入できる仕組み。2022年11月現在、契約美容室は約4500軒。顧客はこれらの美容室で対面カウンセリング、または髪質の触診や視診を受けることで、会員に登録できる。すでに約36万人が会員登録しており、「100万人超え計画」を掲げて進行中だ。
「そもそもECに取り組んだ背景は、美容室で商品を購入する習慣が少ないことでした。美容室への来店周期は定期的でも『自宅のシャンプーが切れるタイミングと合わない』『商品を買うためだけに美容室に行くのはハードルが高い』との声が非常に多かったのです。
ライブコマースへの参入はmilbon:iDの魅力向上の手段として検討したのがきっかけになっています。ECで新たな接点を作ってリピート漏れを防ぐだけでなく、さらに『新たな買い場』から『購入体験の場』にしていく狙いでライブコマースへの取り組みを始めました」(蓑原氏)
「店舗体験のジレンマ」を双方向コミュニケーションで解消
ミルボンのライブコマースは、milbon:iD会員限定の公式ライブショッピングサービス『LIVE SHOPPING by milbon:iD』としてスタート。会員だけが視聴と購入ができる仕組みだ。
会員はそもそもリアル店舗の接点を持つはずだが、ライブコマースとの体験の大きな差はどこにあるのだろうか。
「リアルの店頭販売は、美容師さんを通じて髪質の診断や相談、ヘアケアを実際に体験できる一番ホットな接点であり、定期来店をしてくれるところが長所です。ただ来店のタイミングには制限があります」(蓑原氏)
顧客は来店のタイミングだけだと多くある商品のすべてを覚えられず、質問もしにくい。ライブコマースなら、顧客の生活時間の中で聞きたい時に聞くことができ、一定の商品に絞ってしっかりと時間をかけて知ることができる。また、コメントで質問も可能だ。リアルと違って途中参加や離脱が容易で、気軽にコメントでき、心理的ハードルが低いことも魅力となっている。
ミルボンとしても、顧客と実際に話す機会はあまりなかった商品開発者らが、開発でこだわった点などを伝える機会にもなっているという。
「お客様は、気になる商品があっても美容師さんに話を訊きにくいこともあります。美容師さん側もサロンワークが忙しい中では、商品の魅力を1時間かけて紹介できません。ライブコマースは双方向のコミュニケーションによってそのジレンマを解決でき、会話の先に購入体験が生まれる場となっています」(蓑原氏)