当日も参加後も「満足してもらう」ことで、プロモーター(推奨者)が増えていく
2.コンテンツの設計:「Attract(アトラクト=惹きつける)」のステージ
ゴールが決まったら、コンテンツを企画します。回数を重ねるにつれて、新しいコンテンツ作りに頭を悩ませる担当者も多いのではないでしょうか。短期的な「Attract」(集客)だけを優先してしまうと、お届けできる内容が薄くなったり、イベントタイトルや登壇者のネームバリューへの期待と実際に得られた体験ギャップが大きかったりと、結果的に「Engage(信頼関係を築く)」のステージにつなぐことが難しいケースが多くなります。
私がイベントのコンテンツを検討する際に気をつけていることは「自信があるトピックしか取り上げない」こと。「自信がある」状態とは、テーマや登壇者がHubSpotの顧客支援領域や提唱する世界観としっかりつながっており、そのイベントを主催することで参加者への価値提供ができると確信している状態です。集客タイミングで関心を高めることではなく、実際にウェビナーに参加してもらった際に自社への信頼も高まるような内容を提供できているかがポイントだと考えています。
3.当日運営の設計:「Engage(エンゲージ=信頼関係を築く)」のステージ
イベントを通して得られる情報の質が高いことは当然です。インバウンドなマーケティングイベントにおいては、情報を得るプロセスや体験の質も重要です。一方的に企業が情報を発信するだけではなく、参加者と企業の相互コミュニケーションや連帯感、イベントを「共創」していると感じられることは、「Engage(信頼関係)」に繋がります。
たとえば、ライブコメント欄を設置し、参加者が自由に質問やコメントの投稿をしたり、参加者同士で会話できる仕組みを作ったり、発表中にZoomの投票機能を活用して参加者のリアルな課題を集計するなどの工夫は、「共創」を感じられるイベントを作る上で有効です。また、HubSpotのイベントでは、ライブのQ&Aの時間を長めにとって参加者と登壇者が対話できる時間を創出することで、参加者の満足度を高められるよう工夫しています。
4.事後フォローのコミュニケーション設計:「Delight(ディライト=満足させる)のステージ
私たちが重視しているのは、ウェビナー当日のみではなく、参加者のイベント後の行動をいかに支援できるかです。渾身のウェビナーを企画しても、その場限りで後につながらない会となってしまっては参加者にも、自社にとっても中長期的な効果が出づらいと考えているからです。
そのため、ウェビナー当日に多くの質問を頂いて時間内に回答できなかった場合は後日メールで回答をお届けしたり、ウェビナー内で使った資料や映像も極力お渡しできるようにしたりといった工夫をしています。たとえば、2020年4月、コロナ禍初期に実施した「効果的なウェビナーを開催するための10のポイント」というウェビナーでは、ウェビナーを初めて開催する方でも視聴後すぐに自社ウェビナーの企画にとりかかれるよう、「集客に必要なもの」などをまとめた資料を送付しました(下記画像)。

当日および事後の両方で「Delight(満足させる)」をしっかりと実践できると、イベントの感想をSNSで発信してくれたり、同僚に伝えてくれたりする「プロモーター(推奨者)」が増えていきます。なおプロモーターはその後のイベントでも発言をしてくれるなど積極的な参加をしてくれる傾向があります。イベント中の発言や対話は他の参加者にとっても有益な情報源になるため、プロモーターは他の参加者の満足度にも寄与する、企業の「仲間」のような存在になります。フライホイールが良い循環で回っている良い事例の一つです。
このように、フライホイールの考え方を念頭に置いて企画運営を行うことで、常に「参加する人」にとっての価値に立ち戻ることができ、参加者にとってもイベントを主催する企業にとっても、ポジティブな循環を生み出すことができます。