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ビジネスに直結する「インサイト」発掘の手法とは?ユニリーバ 木村元氏が1から解説

 昨今、インサイトの重要性はマーケティング界隈において注目されている。消費者や顧客のインサイトを発掘することで、これまで掴みきれていなかった潜在的なニーズや課題が浮かび上がり、マーケティングの成功、ひいてはビジネスの成長につながるのだ。しかし、具体的なインサイト発掘の実践法や事例はまだまだ少ない。そんな中、マーケティングの次の一手を探る「MarkeZineプレミアムセミナー」の9月16日実施回に、Brandism/ラフラ・ジャパン代表の木村 元氏が登壇。長年toB/toCの上流マーケティングに携わってきた視点から、インサイト発掘のための具体的なステップを、事例を交えて解説した。

※本記事は、2022年12月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)84号に掲載したものです。

インサイトの前に重要な、ターゲットの定量分析

 ユニリーバ・ジャパンで10年以上マーケティングに携わってきた木村氏は、消費財のマスマーケティングやブランドマーケティングを中心に担当してきた経歴を持つ。2021年7月にユニリーバ・グループのプレミアムスキンケアブランドを扱うラフラ・ジャパンの代表に就任してからは、グローバル展開を含めたマーケティング戦略を推進している。さらに、2021年にはBrandismを創立。ここではtoBを含めた企業に対して上流マーケティングの支援を行っている。

株式会社Brandism 代表取締役 ユニリーバグループ ラフラ・ジャパン 代表取締役 木村 元氏
ユニリーバグループ ラフラ・ジャパン 代表取締役/Brandism 代表取締役 木村 元氏
ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後、2020年1月より、ユニリーバ・ジャパンにおけるスキンクレンジングカテゴリーならびにダヴブランドを統括。2021年7月より同ユニリーバ・グループのプレミアムスキンケアを扱うラフラ・ジャパンの代表取締役に就任。また、2021年よりBrandismを創業し、ToBからToCまで、幅広くマーケティングのサポートを行っている。

 木村氏は、本セミナーのテーマである「インサイト発掘の手法」の具体的な話に入る前に、マーケティング・プロセスの全体像を提示した(図表1)

図表1 マーケティング・プロセスの全体像(タップで画像拡大)
図表1 マーケティング・プロセスの全体像(タップで画像拡大)

 これは、toC/toBどちらのマーケティングにも当てはまるステップで、新規事業やプロダクトだけでなく、売上が鈍化してきてマーケティング戦略を見直す際にも役立つプロセスだという。

 フェーズ1はマーケットや顧客を理解する段階。木村氏は「このフェーズ1が勝敗を決めると言っても過言ではない」と重要性を強調する。フェーズ1はWHO/WHATを、フェーズ2、3はHOWを考える段階とも定義できるだろう。インサイトの理解は、そんなフェーズ1のなかに位置づけられる。

 しかし、インサイトの前にやっておくべきことがある。それが「STP分析」だ。フィリップ・コトラーが提唱したフレームワークで、ブランドの立ち位置を戦略的に作っていく、上流マーケティングのプロセスだ。

 STPはセグメンテーション、ターゲティング、そしてポジショニングの頭文字。セグメンテーションでは市場や顧客を細分化してボリュームを把握する。ターゲティングではそのうちのどの層を狙うのか決め、ポジショニングで自社のサービスの位置づけを決定する。

 木村氏はその実際のプロセスを、女性向けの低アルコール飲料ブランドの事例を用いて説明する。

 セグメンテーションでは、性別や年齢などのデモグラフィックで切り分けるほか、飲酒の頻度やお酒の種類、目的でもセグメントする。また低アルコール飲料は「お酒が強い人が休肝日に飲んでいるのか、あるいはお酒が弱い人が飲むのか」どちらのほうがボリュームが多いのか直感ではわからない。そのため、ここも切り分けておく。

 そうすると、たとえば「女性、20代、お酒が好きで強い、飲酒頻度は週に1回未満、ワインをよく飲み、目的は友人と楽しく過ごすため」というパターンのターゲット像が見えてくる(図表2、緑部分)

図表2 某女性向け低アルコール飲料ブランドのセグメンテーションの実際の例(タップで画像拡大)
図表2 某女性向け低アルコール飲料ブランドのセグメンテーションの実際の例(タップで画像拡大)

 いろいろなターゲット像のパターンを仮定し、「それぞれのボリュームを算出することが非常に大事」だと木村氏。統計データを用いて、そのターゲット層が市場にどれくらい存在するかを出すことで、事業として狙うべきターゲットを定量的に分析できるわけだ(図表3)

図表3 統計データを用いて、ターゲット層のボリュームを推計
図表3 統計データを用いて、ターゲット層のボリュームを推計

 このように、インサイト発掘の前に、ターゲットを戦略的かつ定量的に考えることが重要だ。木村氏は「まったくボリュームがないところでビジネスをしても意味がありません。自分たちのブランドが向かう先として正しいユーザーを取れるのかといった観点で、まずはセグメンテーションやターゲティングをする必要があります」と、インサイト発掘以前のプロセスの重要性を語る。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/01/12 09:00 https://markezine.jp/article/detail/40899

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