データで検証!掛け布団と敷布団の顧客像の違い
水野:ねむりの相談所やモニター企画は、データ収集の観点からも意義深い取り組みだと感じます。眠りの計測データを入手できるほか、訪れるお客様の意識や生活スタイル、利用後の反応はすべて商品やサービスの開発・改良に活かすことができるからです。西川では日ごろからデータの収集・活用を意識されていますか?
佐藤:みんなの眠ラボの運営や西川の商品・サービスのほか、睡眠に関するアンケートを定期的に行っています。加えてNPS調査やインタビューを通じてVOC(Voice of Customer:顧客の声)を分析し、販売やマーケティングの気づきを得ています。
たとえば、商品ジャンル別の顧客像の違いです。西川は歴史が長い会社なので、様々な年代のお客様に商品を愛好していただいています。行動データやアンケート結果を分析すると、掛け布団のユーザーと敷布団(マットレス)のユーザーでは、顧客層や意識、価値観が違うことがわかりました。我々も肌感覚ではわかっていたのですが、データで検証できたことは非常に有意義でした。
水野:多くの人が抱える眠りの課題解決に向けて、今後の展望とみんなの眠ラボのチャレンジをお聞かせください。
佐藤:企業ビジョンである「よく眠り、よく生きる。」の実現に向けて、西川の商品やサービスを知ってもらうための情報発信には今後も力を入れていきたいと考えています。睡眠の質を高めるためには、ケアの範囲を夜だけでなく日中にも広げなければいけないことが我々の研究でわかりました。すなわち、衣食住の各シーンやオフィスでの働き方にも目を向ける必要があるということです。
範囲を広げた取り組みの一環として、法人向けの睡眠改善プログラムに注力しています。これは、クライアントの社員を対象にした快眠セミナーの実施や、睡眠データの収集・可視化、データに基づく睡眠環境のアドバイスを提供するサービスです。日本睡眠科学研究所の知見を活かしたオフィスの仮眠スペース「ちょっと寝ルーム」も提案しています。
水野:すばらしいですね。僕も「ちょっと寝」したくなってきました。
佐藤:このような西川の取り組みを、西川自身が発信することも重要ですが、西川以外の第三者が共感・発信してくれることで、より多くの人に伝わると考えています。お客様の生の声を生み出し、西川の商品・サービスの良さを広く伝えるための場として、みんなの眠ラボでは今後も様々な企画を実施していくつもりです。
水野:西川の眠りへの取り組みが、より多くの人たちに伝わると良いですね。本日はありがとうございました。
対談後記
西川は、創業456年の歴史を持つ寝具メーカーです。創業の地・近江の商人哲学「三方良し」の精神は、社是の「誠実」「親切」「共栄」に引き継がれています。そのような企業風土と、良質な商品・サービスへの自信が、睡眠不足という社会課題の解決に取り組む社員の皆さんの強い意志につながっていると感じました。
みんなの眠ラボの存在感は、西川社内でも高まっています。コミュニティを起点とした共創企画やオンラインライブの実施、VOCの活用など、買い替えサイクルの長い耐久消費財メーカーならではのコミュニティ運営を知ることができました。今後も、デジタル化と睡眠に関する知見を組み合わせた価値の提供が続くことを楽しみにしています。
