新たな気づきを得るための「非言語情報」の見方
さて実際にどんな気づきがあったのか、どんなキーワードが出てくるか、下記の写真を見ながら考えてみたい。
まず、「おかゆは土鍋で炊くんだ」という気づき。おかゆがお茶碗に盛られて登場しているのではない。おそらくお茶碗に盛られて出てきた時点で、ごちそう感は半減するのかもしれない。とすると、キーワードとして「ごちそうごはん」というものが出てくる。どうだろう、米飯がごちそうになるという発想は、改めて考えると発見となるのではないだろうか?
また小皿に盛られた梅干しやらを見てみて、おもしろいなと気づく。おそらくどこの家庭でもあるであろう、冷蔵庫の奥にある忘れ去られた「ビンもの」が、形を変えて登場している。忘れ去られた、かぴかぴになりがちな佃煮などが入ったビンものも、このように「ごちそう」となることに気づく。キーワードとしては「ビンものの新しい生き方」ではいかがだろうか。
そしてごちそうごはんのはずなのに、突如として登場するインスタントみそ汁にお気づきだろうか? ぜひここに違和感を持っていただきたい。聞けば、旅館風だから赤だしみそ汁にしたかったが、赤だしは常備していないので、インスタントみそ汁にしたらしい。これは手抜きだとか簡便ではない。とするとキーワードは「スペシャルインスタント」だろうか。
気づきの視点を持つことはとても大事ではあるが、そのためにはテクニックが必要で、日ごろのトレーニングが肝心である。常日頃、こういったデータの見方を意識しておいたほうがよい。
非言語データの読み解きに求められるクリエイティビティ
こうやって気づきをたくさん集め、キーワード化していくという作業を進め、重層化していくと共通項が見えてくる。そこで初めて、仮説を立てるという作業をする。つまりここまでの作業では、自社のマーケティング課題の答えを出そうとしないことが重要である。
そうして出てきた仮説を今度は言語化して、検証のための定性調査や定量調査にかけてみるということをするとよい。
一見遠回りかもしれないがこのようなステップを踏むと、おそらく、未着手領域の芽を見つけ出すことができたり、もしくは現状の課題解決に留まらないもっと先のコンセプト開発が可能になったりするのではないだろうか。非言語的アプローチは「探求」のために非常に有効で、おそらく手法としては最適だと考える。
一方で、非言語データの読み解きは難しく、特にマーケターやリサーチャーの「気づく能力=クリエイティビティ」が要求される。特に未開発領域においては、生活者自身がまだ言語化できていない「欲しい」を形にしていかなくてはならない。これからのマーケターやリサーチャーには、マーケットをクリエイションするという視点が重要となっている。
