世界から見た、日本の広告市場のポテンシャル
——日本の広告市場の価値やポテンシャルについて、グローバルの視点からどうご覧になっていますか。
日本の広告市場はアメリカと中国に次ぐ大きな市場です。WPPのグローバルのクライアントやマーケターも常に日本市場の動向を話題に上げています。同時に、「日本はDifficult」だという印象も強い。海外のコンテンツやクリエイティブのテイストが、日本には合わないことが多いんですね。
また、日本はグローバルなスタンダードを避けてきた傾向があります。「日本は違う。だからこういうことをやろう」というマーケティングのやり方で、ある意味成り立っていました。しかし今はあらゆるものがデジタル化されて計測できるので、ROIなどの結果が求められるようになってきています。外資系のマーケティングではそういった成果を求められていますし、日本市場でももっと増えてくるでしょう。
デジタルでリーチできる消費者が世界にはたくさんいる中で、コミュニケーションをとるための基盤の8割以上(ただし中国を除く)がMetaやTwitter、Amazonといった巨大プラットフォーマーです。そういったプラットフォームのなかで計測するべき数値や見るべき指標はグローバルで標準化されています。
ですから、グローバルスタンダートは日本でもより浸透していくと思います。結果が測定できることや、クオリティ・インプレッションが担保されていること、そして投資対効果がわかることが当然必要になってくる。日本市場の伸びしろは、そこにあります。

グローバルスタンダードが日本市場に浸透していく
——日本のマーケティング従事者の多くが、変化が必要なことを認識していて、課題だと痛感しているポイントだと思います。
日本の広告業界の方たちは、求められているKPIや数字を適切な方法で正確にアップデートしています。でも、それ以上に重要なのはデータから導き出せるインサイトや戦略なんです。クライアントも、データ表を見ればCPMやCPIがいくらかはわかるわけです。その先にある「じゃあどうするのか」の部分が、これからのマーケティングのプロフェッショナルサービスには求められるでしょう。
私は同様のことをWPPジャパンのチームにも言っていて、「こういう媒体で何人が見ました」と数字を見せるだけではクライアントに価値を提供しているとは言えません。インサイトと戦略まで持っていかないと意味がないと伝えています。ここも日本市場において伸びしろがある部分です。これからはマーケティング業界含めて皆が変化していかなければいけないですよね。
——日本ではまだなかなかできていない、そういった一歩踏み込んだインサイトの考察や戦略提案までできる点が、WPPジャパンならではの強みになってくるのでしょうか。
そうですね。WPPではグローバルスタンダードが求められます。ただし、どの市場でも同じマーケティングをすることを求めているのではなく、各市場でクライアントが求める戦略やプランを作ることがまず必要です。そして、そのうえでグローバルで統一すべきは、テクノロジーやプロセス、メジャーメントなのです。
また、フォーチュン500のうちの317社がWPPのパートナーとして、業界のリーダー同士の情報交換をしています。そこで蓄えた知見も強みです。たとえばMetaやTwitter、Amazonといった企業は、世界全体でもっと安全で透明性のあるデジタルのエコシステムを作ることを目指しています。それに対してWPPは、コンプライアンスにまで踏み込んだ深い議論を彼らと重ねています。
このように巨大プラットフォーム企業とともに業界を動かしているのがグローバルレベルでの当社の強みですし、日本市場においても価値を発揮できると思います。
