“ありのまま”のリーダーシップを実践
有園:グローバルで同じプロダクトを展開していると、やはり本国からの制約や指示が少なくないと思います。その中で、日本でモデルを確立して世界へ発信していくために、味澤さんはリーダーシップをどのように捉え、実践していますか?
味澤:確かに、本国からはどうしても画一的な戦略の展開を求められることが多いです。なので難しさはありますが、リーダーシップの観点からは、私は創業者ではなく“雇われ経営者”なので、グローバルの方針も当然ながら常に注視しています。また前述のように優秀な人がたくさんいるので、あえていうなら、自分を大きく見せたり取りつくろったりしない“ありのまま”のリーダーシップを実践しているつもりです。
有園:なるほど。
味澤:そういう姿勢でいないと、メンバーの信用も得られないと思うんですよね。
ただ、ピープルマネジメントとしてDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)には気を付けています。元々バックグラウンドが多様なメンバーが集まっていますし、当社が提供するプラットフォーム自体、様々な人が使ってくださっているサービスなので、この考えが徹底・反映されていることは大前提だと考えています。
他には、One Japanになるためにもカルチャーづくりを心掛けていることや、どうしてもこの3年は不安定な時期でリモートワークの影響もあるため、帰属意識を醸成することを大事にしてきました。
有園:キャリア形成に関しては、どうお考えですか?
味澤:そうですね、皆がマネージャーにならなくてもいいかなとは思っています。どちらかというと、5年後、10年後にどうなっていたいかを聞き、それに向けて今この会社でどう働けるかを一緒に考えたりします。そうすると、ここで働く意味が明確になり、自己実現につながると思います。
課題はプライバシーの保護とパーソナライズ広告の両立
有園:では、直近のネット広告業界をどうご覧になっているかをうかがいます。特に注視しているのはどんなテーマでしょうか。
味澤:やはり、データプライバシーの問題です。個人情報保護法の2022年4月の改正によって、ビジネスへの影響も大きいと捉えています。ただ、業界全体として、生活者に安全安心にプラットフォームを使っていただき、ビジネスとしても安全安心にデータの利活用ができることが重要だと思うので、していいことと悪いことが明確になったのはよかったと捉えています。
有園:同感です。Metaとしては、具体的にどういった考えや取り組みがありますか?
味澤:広告事業者としては、プライバシーの保護とパーソナライズ広告の運用は、両立できるものだと考えています。プライバシーの問題をクリアした上でなら、その人に関連性の高い広告が表示されれば自分にフィットしている情報を得られ、利用者にもメリットがあります。
具体的には、2つの方法を模索しています。ひとつはデータ取得に関して、コンバージョンAPIによって利用者のデバイスではなく広告主側のサーバーに接続し、我々のサーバーでのデータとハッシュ化し安全な形でマッチングしてターゲティング、もしくはトラッキングできる仕組みです。
ただ、そもそも取得できるデータ自体が少なくなっていくので、もうひとつの方法として広告配信のテクノロジーを磨いています。我々の持つファーストパーティデータも活用して、利用者ごとに関連度の高い広告を配信していきます。