より良いデジタルメディアの世界を目指して
北の達人のマーケティングチームは、運用チームが10人程度、クリエイティブはディレクターが4人、ADが20人。これにデザインなど制作チームが20人程度だという。「運用は理系的な観点のスペックが高い人材が多く、ディレクターやADはマーケティングが好きな人が多い」そうだ。
木下氏は、ファンダメンタルズ×テクニカルとして両方を習得することの重要性を説いているが、この点についても「本当は1人で全部やれるのが理想だが、現実問題として両方できる人が少ないので、クリエイティブと広告運用を分けている」「両方完璧となると難しいが、成果が出ている人は両方ともある程度習得している」と述べる。ある程度クリエイティブを理解している運用担当者のほうがクリエイティブのメンバーと話をするときに適切な相談ができるなど、コミュニケーションの観点からもやはり両方のスキルを身に着けることが望ましい。
自身が考え抜いた理論や北の達人での取り組みを惜しみなく共有する木下氏だが、その理由は「競合を含め、いろんな企業に真似してほしいから」なのだそうだ。その背景には、広告主・ユーザー・メディアの3者すべてがハッピーになるデジタルメディアの世界に変えていきたい、という思いがある。
各社がWebマーケティングのスキルを上げれば、それぞれ適切なターゲットにしか出稿しなくなる。そうすれば、総広告出稿量が減り、広告費の相場が下がる──つまり、広告主の利益率が上がる。また、ユーザーの立場から見ると、デジタルメディアから無駄な広告が減り、自分に合った広告のみが表示されるようになると、より使いやすくなる。これによりメディアの視聴時間が増えると、広告枠が増え、結果的にメディアの売上が増える──こういった広告主・ユーザー・メディアの3者すべてがハッピーになるトライアングルを木下氏は目指しているのだ。
トライアングルに入っていないエージェンシーについては、「インターネットというビジネス自体がエージェンシーを必要としないという大前提がありますが」と前置きしつつ、「広告主のマーケティングスキルの向上において、エージェンシーのコンサルティング的な力が求められてくるのではないでしょうか」と言及した。業界全体の知識や情報など、幅広い視野での知見の共有はエージェンシーこそが発揮できる価値としてあるだろう。
最後に木下氏は「1社1社のWebマーケティングのスキルアップがデジタルメディアの世界を変えていきます。ぜひ一緒によりハッピーな世界へ変えていきましょう」と呼びかけた。
