インフルエンサーを通じたファンコミュニケーションが要
──どのような形でコミュニケーションを展開していくのでしょうか?
マーケティング施策全般において、既存のブランドとは大きくやり方を変えています。Z世代はいわゆるデジタルネイティブな世代なので、テレビや雑誌でマスコミュニケーションを展開するのではなく、SNSやWebなどターゲット層が普段接しているチャネルに焦点を当てています。
具体的な施策例を挙げると、ブランドリリースにあたり男性の美容トップインフルエンサー3名と組んでプロジェクトを進めてきました。商品を実際に使っていただき、色味やテクスチャーに関するフィードバックをいただいてその意見を商品に反映するなど開発面から協力いただきましたが、ブランドリリース後の12月14日にこの3名のInstagramとUNLICS公式Instagram、合計4つのアカウントでインスタライブ配信を行いました。全体で4,600名を超えるリアルタイム視聴があり、今後はアーカイブの視聴も伸びていくことを期待しています。
こうした美容インフルエンサーの方をフォローしている方々こそ、UNLICSの未来の愛用者になってくださると思うので、インフルエンサーさんとフォロワーさんたちの声を反映して商品開発や施策を進めていきたいと考えています。
また、Webでのブランド体験も作り込んでいます。UNLICSは現在オンラインショップと楽天市場の2つのチャネルで販売していますが、ネット販売だと実際の色味を試せないというデメリットがあります。その課題を解消するため、ブランド公式サイトでは「BEAUTY DIG-TIONARY」という機能を提供しています。
これは文字どおり「美しさを深掘りする」という意味で、デバイスのカメラを使って自分の顔で色味をバーチャル体験できたり、自分のなりたいモデルのイメージを選んでメイクのやり方を動画解説で学べたりなど、商品を使いこなしていただくためのサポート機能になります。メイク用品を使ったことのない男性の方は、メイクしたときのイメージがなかなか浮かびにくいと思うので、20種類のモデルのメイクパターンから理想のものを選べるように工夫しています。
──花王は多数の人気ブランドを創ってきましたが、今回のUNLICSに関しては「今後の成長が見込まれる市場だから新ブランドを立ち上げた」のか、それとも「ダイバーシティの観点からメンズコスメのニーズに応えよう」という思いがあるのか、どちらの判断があったのでしょうか?
確かに市場の伸びに期待している点もあると思いますが、現実にはまだメイクをしている男性は少ないということもあり、ビジネス観点だけではないと思います。
Kao Beauty Brands全体としては「Celebration of Individuality」というパーパスを掲げており、個々人の個性や美を尊重していく理念があります。UNLICSをきっかけにスキンケアやメイクに親しむ男性が増えていくことを期待しています。
自分がきれいになることで自分らしさをより表現できるようになりますし、そうすれば他の人の個性や美を尊重することにつながります。UNLICSというブランドがそんな素敵な未来のきっかけになることを願っています。