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MarkeZine Day 2025 Retail

商品カテゴリ別・調査データに見るブランド力の理由―NRI BRAND INDEX調査―

曖昧なブランド力をどう評価する?商品価値の今と未来を可視化する新指標「NBI」

(2)Baseスコアは、過去から蓄積されてきたブランド力を評価

 マーケティング担当者がブランド戦略を検討するためには、まずは自社商品・サービスのブランド力についての現状における評価を、構造的かつ詳細に把握することが必要である。

 Baseスコアは、過去から蓄積されたブランド力を示す指標。ブランド・エクイティ研究の第一人者であるケビン・レーン・ケラーのブランド・レゾナンス・モデルの考え方をベースに、NRI独自の要素を加えてモデリングを行い、約30個の調査項目から計算し、スコアをしている(図6)。

図6.NRI BRAND INDEXのBaseスコアを構成する要素(イメージ)出所:ケビン・レーン・ケラー「ブランド・レゾナンス・モデル」3を基にNRI作成
図6.NRI BRAND INDEXのBaseスコアを構成する要素(イメージ)
出所:ケビン・レーン・ケラー『エッセンシャル戦略的ブランド・マネジメント第4版』(東急エージェンシー、2015年)を基にNRI作成

 図7は、自動車のSUVカテゴリーにおけるBaseスコアの算出結果で、Baseスコア上位5ブランドの評価指標のレーダーチャートだ。この結果をみると、上位ブランドの中でも、形状が大きく異なることがわかる。これは、それぞれの差別化要素が異なることを表している。

 このように、Baseスコアにより、競合と比較し、どのポイントで差別化できており、どのポイントでは差をつけられているのかを把握できる

図7.Baseスコア上位5ブランドの詳細評価出所:NBI2023(Web調査、2023/2)
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図7.Baseスコア上位5ブランドの詳細評価
出所:NBI2023(Web調査、2023/2)

(3)Leadスコアで商品ブランドの将来性を加味して評価

 一般的に新しい商品やサービスの評価は、その商品カテゴリーでの「オピニオンリーダー」層から順に行われる傾向がある。ここでいうオピニオンリーダーとは、次の二つの特徴を持つ。一つは、あるカテゴリーへの関心が高く、様々な情報源から積極的に情報を収集すること。もう一つは、実際に商品やサービスを購入・利用し、SNS等を通じて活発に情報発信することだ。一般的にこのオピニオンリーダーの評価が、大衆層の評価に大きな影響を与えている(図8)。

図8.オピニオンリーダーによるブランド評価が波及するイメージ
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図8.オピニオンリーダーによるブランド評価が波及するイメージ

 この特徴を踏まえ、オピニオンリーダー層による評価が、当該商品の将来における世の中全体のブランド評価の先行指標となるものという考えのもと、当該カテゴリーのオピニオンリーダーのみに絞って算出したBaseスコアを、Leadスコアとして採用している。

 図9は、先程紹介した自動車のSUVカテゴリーにおける、Leadスコア上位5ブランドの評価指標のレーダーチャートである。これをみると、三菱自動車のアウトランダーは、Baseスコア上位5位には入っていなかったが、Leadスコアではランクインしている。このアウトランダーのBaseスコアとLeadスコアの詳細項目の評価を比較したものが図10である。「セイリエンス」や「理解・評価」の部分は似た傾向だが、「レゾナンス」の要素である「コミュニティ」「愛着」「ロイヤルティ」では、Leadスコアの方が高い。つまり、オピニオンリーダーからこれらの点が評価されており、将来的にはBaseスコアでも同項目のスコアが高まっていく可能性が示唆される。

図9. Leadスコア上位5ブランドの詳細評価
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図9.Leadスコア上位5ブランドの詳細評価
図9. Leadスコア上位5ブランドの詳細評価
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図10.三菱自動車アウトランダーのBaseとLeadの詳細評価

(4)Trendスコアでブランドの流行を反映

 SNSが浸透する以前は、商品・サービスに対する生活者のブランド評価は、主に企業から発信される情報・イメージや実際の商品・サービスの購入経験をもとに構築されることが多かったため、変化はゆるやかだった。しかし現在では、SNSを通じた人々のコミュニケーションにより、ブランドに対する評価が大きく変化しうる時代となっている。NBIでは、この変化を捉えるTrendスコアを組み入れ、現在のブランド力の勢いを総合的なブランド力に反映させている。Trendスコアは、SNS解析ツールを活用し、当該ブランドに関する投稿数をもとに、NRIが構築した独自のロジックにより指標化している。図11はSUVカテゴリーにおけるTrendスコア上位5ブランドのスコア、図12はそれらの順位を月別で示したものだ。

図9. Leadスコア上位5ブランドの詳細評価
図11.上位5位のTrendスコア
図12.Trendスコア上位5位ブランドのTrendスコア順位の推移
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図12.Trendスコア上位5位ブランドのTrendスコア順位の推移

 TOP2ブランドには変動が見られないが、残りの3ブランドは月別で変動がみられる。特に、日産のエクストレイルは、22年7月頃よりTrendスコアの順位が急上昇していることがわかる。Trendスコアは、このような短いスパンで変動するブランドの勢いを総合的なブランド力に反映させるために組み入れている指標だ

  このように、NBIでは、Base、Lead、Trendという三つのスコアを活用することで、立体的にブランドを評価できるような工夫をしている。定量的に測定が難しい「ブランド力」ではあるが、今後もNBIを進化させ、より「ブランド力」を定量化できるよう取り組みを続けていく予定である。

 NRIでは、消費財、耐久財、サービスを含めた22カテゴリーを対象にNBIを算出するための調査を2023年1~2月に実施した。各カテゴリーの上位ブランドについては、NRIが運営するWebサイト「INSIGHT SIGNAL(インサイトシグナル)」にて順次公表している。

 なお本連載では次回より、調査した商品・サービスのカテゴリーの中から一つずつピックアップし、各ブランドの差別化要素やポジショニングの分析を通じ、ブランディングのポイントについて解説をしていく。

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この記事の著者

梶原 光徳(カジハラ ミツノリ)

野村総合研究所 マーケティングサイエンスコンサルティング部 グループマネージャー
2008年入社。以来、マーケティング×データアナリティクス分野を中心に、民間企業の
コンサルティングに従事。社内の新規事業の企画や立ち上げなども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/28 07:00 https://markezine.jp/article/detail/41549

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