絶えず技術革新が起き続けるネット広告業界で生き残るには?
有園:今回橋口さんとの対談を希望した背景には2つの理由があります。
この対談企画「有園が訊く!」も8年目に入り、私も昨年Microsoft広告事業の責任者に就任してこの業界を振り返ったのですが、ネット広告業界の黎明期から業界をリードしてきた方々と改めて今後の市場のあり方について話し合いたいと思ったんです。まずこれが1つの理由です。
橋口さんはそれこそ業界をリードしてきたトップ人材のお一人です。そして常々「この業界をさらに良くしていかないといけない」という問題意識をお持ちなので、具体的にどのようなお考えがあるのか伺いたいと思いました。これが2つ目の理由です。
橋口:ありがとうございます。そう言っていただけるのはうれしいですが、とても恐縮です。
有園:2000年に広告会社の日広(現・GMO NIKKO)でネット広告事業を立ち上げてから、現在は720名の社員が在籍するグループ持ち株会社の社長になられたわけですが、長年この業界に携わる中で最も苦労したこと、大変だったことは何ですか?
橋口:この業界は安定している期間が非常に短く、絶えず技術革新が行われているので、生き残ること自体が非常に大変です。そういう意味では「常に大変」という状態ですね。
デバイスが変わり、通信速度が変わり、様々な分野で技術革新が行われ、それにともないユーザーのライフスタイルも変化します。作る側も分析する側もそれに応じてやり方を次々にアップデートしないといけません。その一方で、期待されながらブレイクできなかった技術もたくさんあります。もちろん出遅れるわけにもいかないので、常にアンテナを張っていないといけない。楽しい反面、苦労もあります。
心得まで引き継ぐ、GMO流のマネジメントスタイル
有園:そのような環境下で、700名以上の社員の方を抱えてどのようにマネジメントをしているのでしょうか?
橋口:そうですね、新しい人材が次々と入るなか、いい意味でも悪い意味でも新旧の差というのはあります。いい意味でいえば、ネット広告の歴史を知り、お付き合いの長いクライアント様をよく理解しているというメリットがあります。その一方、やはり既成概念に囚われすぎてそのフレームを打ち破るような提案ができないというデメリットもあります。
組織が100人くらいであれば、私自身も現場に入って教育することもできるのですが、それ以上になるとやはり“仕事を任せる”ことが必要になります。そうでないと組織は大きくなりませんから。
有園:その100人のハードルをどのようにクリアしたのですか。
橋口:そのタイミングでGMOインターネットグループにジョインしたのが大きかったですね。私たちGMOインターネットグループでは、創業以来大切にしているマインド「GMOイズム」というものがあり、グループ全体で共有するべきミッションやビジョン、バリューを明文化した「スピリットベンチャー宣言」があります。
これはWebでも一部が公開されていますが、実はWebに掲載しているのはあくまで一部分にしか過ぎません。私たちが向かうべき方向や幹部の心得、目標の立て方や達成に向けての心構えなど勝利の法則が詰まっていて、毎年アップデートされています。これをグループ全員で共有し、仕事を任せた時には単に作業を任せるだけでなく、ここにあるいろいろな心得を含めて引き継ぐ形になっています。これが大きいですね。
私も幹部としてここに書かれている模範を示す必要がありますし、これを読むたびに身が引き締まります。このGMOイズムが浸透していることが非常に大きいと思いますし、当社の強みだと捉えています。