メタバース利用者にアプローチするためには?
では、この明らかになったメタバース利用層に対してどのようなアプローチをすればよいか。平沼氏はマーケティング戦略の方向性について紹介する。
「前提として、これまでメタバースサービスに関与がなかった人をいきなりターゲットにしても、行動を起こしてもらうことは難しいです。基本的には、まずメタバース利用層を動かすことを考えるといいと思います」(平沼氏)
具体的なターゲット像としては、前頁で触れたように、いわゆるZ世代と呼ばれる10〜20代の男性となる。彼らはメタバース利用に関して動画発信を行ったりボイスチャットを経験したりと、情報拡散力が高い。また、メタバース空間でフィールドやアイテムを作る傾向があり、メタバース空間を活性化させる力も高い。こうした層を戦略ターゲットとしてコミュニケーションすることで、メタバース空間の認知向上、メタバース空間自体の活性化につなげられる。
「マーケティングコミュニケーションとしては、個人単体で楽しめるコンテンツよりは、複数人のユーザー同士が一緒に盛り上がれる場をメタバース空間として提供するとよいのではないかと思います」(平沼氏)
これにより、メタバース外ではSNSや動画での情報の拡散・配信行動が期待できる。また、メタバース内で誰かのためにアイテムの提供やフィールドを作成するなど、メタバースサービス自体を活性化する動きをとってくれる可能性も高い。
メタバースユーザーは、現実空間での飲み会や旅行などのオフ会も行う特性から、デジタルとリアル連動型のイベントを実施することで戦略ターゲットのSNSやリアルの友人・知人を巻き込むことができる。また、メタバース内でコミュニティを促進し、ターゲットと同じ趣味を持つ人々にアプローチを行うことで、周辺ターゲットの獲得にもつなげていくことができると考えられる。
社会変化を予測して、新たなコミュニケーション戦術を考える
「メタバースは2030年までに市場が現在の約15倍に急成長することが見込まれています。今回は具体的なエクスペリエンス設計を説明しきれませんでしたが、マーケターやクリエイターは、このメタバース技術によって起こる将来の変化に合わせたエクスペリエンスの設計をしっかり行っていくことが必要になるでしょう」(平沼氏)
平沼氏はそう語り、最後に博報堂DYホールディングスとMESON社が共同で発足した空間コンピューティングやメタバース領域における研究調査・情報発信を行う「Helix Lab」を紹介。生活者発想でメタバースを研究するMTCと、XR体験設計のプロフェッショナルであるMESON社が共同で情報を発信していくため、エクスペリエンス設計への活用が期待できる。
第1弾の活動として、メタバースが将来的に生活者へ与える影響・変化について考察したレポート「Metaverse as Possible Futures:メタバースと15の生活者シナリオ」を昨年末にリリースした。
こちらは無料公開されているので、今後個別案件で具体的なメタバースの活用・エクスペリエンス設計を考えている方は併せて読んでみるといいかもしれない。