有望層のヒントは「エンタメ好き」にあった!
MZ:アナリストパートを担当した杉本さんから、具体的な分析内容を紹介いただけますか。
杉本(三井住友カード):アナリストパートでは2ステップで分析を行いました。第1ステップでは「パーク来場パネル」と「非来場パネル」の消費の違いを明らかにし、第2ステップではパークのゲストを「年間パス購入者」と「非購入者」の二つに区切って違いを明らかにする流れです。
杉本(三井住友カード):第1ステップでは明確な傾向が見られました。パークに来場する方は「余暇はアクティブに過ごしたい」「買い物が好き」などの特徴を備えており、ファミリー層の場合は教育関連の投資額が大きい点も共通項として挙げられます。さらに「過去に来場したが、直近は来場していない方」とパーク来場者の特徴を比較したところ、パーク来場者の「アクティブ性」「オフライン志向」が強い傾向も明らかになりました。
石川(三井住友カード):年間パス購入者・非購入者の違いを明らかにする第2ステップでは、正直に申し上げると苦戦しました。USJは老若男女を問わずあらゆる年代・居住地の方が来場する一大テーマパークです。スケールが大きいぶん、分析対象を適切にセグメンテーションしていかなければ特徴が出にくく、最初は示唆のある特徴や顧客像がなかなか掴めませんでした。
杉本(三井住友カード):分析を重ねていく中で、パーク来場者の「エンタメ好き」という共通項をエンタメのジャンルで細分化することにより、差異が掴めるのではないかと考えました。具体的には、アニメ・アイドル・観劇などのうち「どのエンタメが好きなのか」もしくは「あらゆるエンタメをアクティブに楽しむことが好きなのか」など、ゲストの嗜好性を紐解いた結果、年間パス購入者になり得る方の傾向や、消費単価の高いゲスト像が明らかになりました。
MZ:大規模なデータから分析の手がかりを見出せたのはなぜですか。
杉本(三井住友カード):私は日頃から分析対象に関連するSNSアカウントをフォローして、分析対象のファンをウォッチするようにしています。パークのコアなファンの中にはコスプレをしている方やアニメのイベントに何度も来場する方、クルーの追っかけをする方などが見受けられたため「“推し活”にヒントがあるのではないか」と考えていたのです。この考えを念頭に置いてセグメントを区切ってみたところ、仮説に近い結果が出てきました。
向こう3ヵ月の年間パス購入者をAIで予測
MZ:次に、サイエンティストパートを担当した篠さんから、具体的な分析内容を紹介いただけますか。
篠(三井住友カード):サイエンティストパートでは、二つの目標を掲げていました。一つは「今後の打ち手につながる示唆を出すこと」。もう一つは「ユー・エス・ジェイ様の事業における当社のカード情報の有用性を明らかにすること」です。
篠(三井住友カード):目標の達成に向けて、年間パス保有者の更新タイミングや、新規購入者の購入タイミングを予測しました。そうすればプロモーションの最適な実施時期を示せるとともに、「年間スタジオ・パス・プラス(※)」を当社のカード会員に提案する余地も生まれると考えたためです。
※USJの年間パスとクレジットカードが1枚になったもの
具体的には、当社が保有する過去3年分の会員情報に基づき「3ヵ月以内に年間パスを購入する人」を予測するモデルを作りました。シーズンによって購入者数に変動が生じることを考慮し、データの抽出期間を3ヵ月ずつ過去へずらした六つのデータセットを用意してAIに学習させました。要は季節を理解させたわけです。
MZ:アナリストによる過去分析と、サイエンティストによる未来予測。二つのパートを組み合わせることで、より盤石な分析結果を導き出したのですね。