自社でブランドを運営するecforceが成功体験から教えるD2C成功メソッド
近年トレンドとなっているD2C。しかし、そんな中で「自社のデータを活用してどのようにグロースしていくか、どこにフォーカスしていけばいいか、悩まれている人は少なくない」とSUPER STUDIOの飯尾元氏は語る。
同社が展開している事業は大きく二つ。一つは同社の事業のコアとなっており、法人の自社EC・D2C向けにクラウド型のサービスで展開しているオールインワンECプラットフォーム「ecforce」。もう一つはecforceを活用し自社ブランドの商品を企画・販売するD2C事業だ。
ecforceの特長は、売上、利益を上げることに特化したECカートシステムであること。過去の導入実績ではショップのCVR平均が380%上昇、売上成長率が265%にもなっているという。同社のD2C事業では、アパレルと食品を中心にコスメ、ヘルスケアなど様々なジャンルで自社ブランドの立ち上げ・グロースを行っており、その成功のノウハウもecforceの開発に取り入れている。
「ecforceでは、自社のD2C事業を通して模索している成功の型をシステムに組み込み、D2Cにおける最新の成功の型をお客様に提供し続けているんです」(飯尾氏)
本セッションでは、CMOとしてブランドを牽引する飯尾氏が、同社で蓄積してきたD2Cの成功ノウハウ、注力すべきポイントを解説した。
事業成長の条件は「粗利LTV-CPA=+」
飯尾氏は前提として、D2Cの概況、D2Cという事業モデルの強みについて触れた。近年、ビジネストレンドとなっているD2Cだが、課題を感じている企業も多く、その中心にあるのはLTVの伸び悩みだ。
「CPAがLTVを上回ってしまう、LTVを伸ばしきれないといった状況が、この2年ほどで多く見られるようになりました」(飯尾氏)
ここで改めて確認しておきたいのが、D2Cと従来型ECの販売モデルの違いだ。
従来は、メーカーから仕入れを行った流通業者が販売を行うため、メーカーはユーザーと直接はつながっていない。故に、事業戦略において小売店やECシステムに依存しきった状態となっていた。一方、D2Cでは、メーカーがユーザーに直接商品を届けられるため、ユーザーと接点を持てるようになる。
加えて、それぞれ展開していく方向性も異なる。従来型ECはマス向けに展開されることが多く、コモディティ品を利便性や経済性といった評価がしやすい勝負軸で販売してきた。
一方でD2Cブランドの展開する新世代型ECでは、デジタルマーケティングを活用して自社でユーザーを集客していくことが可能だ。これにより、独自の顧客資産を形成でき、そのブランドならではのニッチな市場の形成が可能になった。
「D2Cの意義というのは、顧客の資産化にあり、現在のメーカー戦略の与件と言っても過言ではないほどになっている」と飯尾氏も強調する。
では、成功企業の共通項とは何なのか?
「成功しているD2Cの企業様は必ず、一人あたりの購入額(粗利LTV)から一人あたりの顧客獲得コスト(CPA)を差し引いたとき、プラスになっています。これがD2Cモデルのビジネスルールであり、事業をスケールさせていく条件です。なお、その実現には自社データを活用し、売れる仕組みを押さえたECを構築する必要があります」(飯尾氏)
この「売れるEC」の原則として飯尾氏が挙げているのは、下記の三点だ。
- 再現性ある新規獲得:集客×CVR購入転換率の最大化を突き詰めること
- LTVの最大化:顧客あたり購入回数×購入単価の最大化で、獲得した顧客あたりの売上を上げる仕掛けを整える
- 運用効率向上/事業コスト抑止:PDCA効率/EC運用効率の最大化と事業コストの抑止により、事業インパクトづくりとリソース・コスト効率を両立する
売れるECとはお客様の満足度を向上させ、LTVを高める仕組みが整えられたECといえる。LTVを高めるためには、顧客あたりの購入回数、単価を伸ばす必要があり、それには商品そのものやカスタマーサポートへの適切な投資が必要となる。その投資配分を実現するには、新規獲得やEC運用のコストをより少なくすることが求められる。後述するデータの活用によって上記の三点を整えたECが、飯尾氏の「売れるEC」であり、D2C成功の鍵だ。
D2C事業の成長に必要なアクションサイクルとECサイトの二つの型
売れるECの仕組みが重要なD2C事業。初期から安定的に拡大していく上で飯尾氏が重要とするのが、施策の大きな流れであるアクションサイクルと、それに伴った販路となるECサイトの設計だ。
「アクションサイクルの第一段階は、許容CPAで再現性を持って顧客を獲得できるような訴求方法、クリエイティブ、集客手段、いうなれば“ゴールデンルート”を最低一つでも見つけることです」(飯尾氏)
「ゴールデンルートの確立」以降は、第二段階として「新たなゴールデンルートの開拓」で許容CPAを崩さずに全体の新規獲得件数を増やし、第三段階の「新商品の継続投下とCRM強化」で既存顧客の再購入の機会を創出。第四段階は「収益性の向上」を目指し、サプライチェーンの見直しによる粗利率の向上や、商品を起点とした集客強化、新規獲得のボトムアップを行う。第四段階のあとは、第一段階に戻ってサイクルを回すことで、継続的な事業成長を目指せるという。
では、このアクションサイクルに合わせてECサイトをどのように設計すべきなのだろうか。飯尾氏はその選択肢となる、一般的なECサイトの型を大きく二つに分けて説明する。
一つは「LP型サイト」。テレビ通販のように販促する商品を絞ることで、必要性や魅力を最大限に伝えるセールストークに特化した型だ。もう一つは「総合ショップ型サイト」。総合量販店のように商品の品揃えや販促企画に幅を持たせ、様々な顧客ニーズとのマッチを狙う。
サイトの型それぞれの長所短所、向いているフェーズについてまとめたのが下図だ。
ECサイトの構成は商材や事業のフェーズに合わせて選択
この二つの型はどのように使うべきか。「自社の商材や事業フェーズに合わせ、サイト構成を正しく選択することが重要」と説明し、具体例を示した。
たとえば、スキンケア系やヘアケア系など単価が取りやすく種類の少ない商品からスタートするD2C事業の場合は、まず、一番主力となる「ヒーロー商品」を設計し、そこに定期販売化やまとめ販売など、利益を最大化できる手段を掛け合わせる。その手段とLPを掛け合わせさらに集客をするというモデルを築いていく。
このモデルを築いた上で、総合ショップ型も取り入れ、他の商品へのアップセルを初回購入時に行い、CRMを構築する。これにより最初からCPAを抑え、LTVが最大化しやすい顧客獲得が可能となる。
「ヒーロー商品についてはLP型を使って集客を行い、事業の拡大に伴って商品数が増加した段階で総合ショップ型を取り入れてハイブリッド化することで、さらなる成長を実現できます」(飯尾氏)
一方、アパレルや雑貨などの多くの商品点数を揃えるD2Cの場合は、単体の商品ではなく人気が出そうなカテゴリーを優先して作り上げていく。その後は、企画単位で販促をグルーピングし、サイト内に各企画の特集ページを作成する。それを起点に集客するのがベターだ。
「多種類の商品が必須のD2Cでは、LP型ではなく、総合ショップ型のサイトが適しています。購入率やLTVを最大化させるために、長期的にユーザーを囲い込めるようなロイヤリティ機能を充実させることが重要です」(飯尾氏)
成長するD2C企業が「データを活用するアクション」と「着目するデータ」
ここから飯尾氏は、冒頭でも触れた自社データの活用について言及した。企業にとってD2Cがもたらす大きな価値は、自社でデータが持てることだ。それにも関わらず、「多くのD2C事業においては、本来あるべきデータ活用とその実態の間には大きなギャップがある」と語る。データ活用が上手くできていない要因としては、「D2Cチャネルの成長のツボを押さえたデータ活用に至っていない」「詳細なデータを振り返る環境がない」「データが活用できる状態にない」といった点が挙げられた。
では、成長するD2C企業の場合、前述の事業グロースのサイクルの中で、どのようなデータに着目し、どのようなアクションに活用しているのか。
飯尾氏はデータを活用すべきアクションとして「新規顧客獲得」と「購入時アップセル/クロスセル」、そして「CRMを用いたLTVの最大化」の三つを挙げ、それぞれにおいて着目すべきデータを下図に示した。
「新規顧客獲得」と「購入時アップセル/クロスセル」を上図左側の各データから確認することで、再現性ある成長ができるかを計ることが可能だと言う。具体的には「媒体×クリエイティブ×LP×オファー」別のCPAや、流入経路別の購入比率やCPAなどの獲得パフォーマンス指標、セッション数やUU数、ブランドサイトCVRなどのサイトパフォーマンス指標を計測する。
上図右側の各データからは「LTVの最大化」、つまり購入金額の高い顧客をどれだけ集められているかを計ることができる。具体的には、チャット型フォーム内のアップセル率や2度目の購入であるF2に転換するまでの期間、CRM施策当たりのROIなどを計測する。「これらの計測がきちんとできていればD2Cのデータ計測は良い状態」だと飯尾氏は述べる。
脱・新規獲得偏重とLTV向上のためのCRM活動が重要
ここまでのアクションサイクルと販路設計、計測すべきデータを踏まえ、今後のD2C業界で特に注力すべき取り組みとは何だろうか。飯尾氏は今一度概況に触れる。
「D2Cにおいてこれまでは新規獲得の量で競ってきました。ですが、D2C参入の増加にともなって広告費が高止まりしているということもあり、今後はこれまで以上にLTVを重要視し、CRM施策を行うために自社で持つデータを活用できるかどうかが非常に重要になっていきます」(飯尾氏)
しかし現状では、多くのD2C事業者でCRM施策にいまだデータを活用できていないケースが多く見られるという。主な原因としては、データの活用や効果検証をツール上で行うことの難易度が高い点が挙げられるとし、調査データを示した。
こうしたデータ活用環境の問題を解決する一手としてSUPER STUDIOが提案しているのが、同社開発の「ecforce ma」だ。
「ecforce maはECプラットフォームであるecforceと、複雑な設定なしで連携し、データの活用環境を素早く整えられるツールです。弊社のD2C事業で実際に効果をあげてきた施策を基に、配信シナリオのプリセットを用意しており、ecforce上の顧客・購入データを用いて効果的な施策が実行可能です。また、それらの効果を施策ごとに売上ベースで可視化できます」(飯尾氏)
売上向上に強みを持つecforceと、LTVを向上させるEC特化型MAツール「ecforce ma」を導入することで、D2C事業のフルファネルでデータ活用が可能になり、CPAを抑えながらLTVを上げ続ける理想的な事業展開が期待できるという。
最後に飯尾氏は、今後の展望として、「弊社では、EC事業者がノーコードで総合的なデータと施策の管理ができる環境を“次世代EC構想”として掲げ、その実現を目指しています。ecforceのサービス群やSUPER STUDIOにぜひご注目ください」と語り、セッションを締めくくった。
「売上を逃さない」ECプラットフォーム ecforce
ecforceはEC/D2C事業者様の売上・利益を上げることに特化した「売上を逃さない」ECプラットフォームです。受注や顧客の一元管理はもちろん、多彩なマーケティング機能によりショップの売上を最大化します。