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「グッズが最も売れるプロレス団体に」社長の一言で始まったNOAHのリブランディングストーリー

調査で浮き彫りになった他団体との圧倒的な差

MZ:社長からのお達しを受け、すぐにブランドガイドラインとタグラインの策定に着手したのですか。

佐藤:最初はABEMAで放送しているNOAHの番組のクリエイティブから変えることにしました。当時は複数ある番組ごとにクリエイティブディレクションが行われていたため、その番組らしさは感じられるものの“NOAHらしさ”が希薄だったのです。クリエイティブのガイドラインでは、ロゴのホワイトスペースくらいしか定義されていませんでした。

刷新前の番組クリエイティブ
刷新前の番組クリエイティブ(画像提供:NOAH)

佐藤:NOAHをグッズが最も売れるプロレス団体にするためには、キービジュアルやテロップなどの表層だけでなく、事業の思想から再定義した上でクリエイティブに落とし込む必要があると考えました。武田さんにも「現場のスタッフを巻き込みながらNOAHのブランドを体系立ててつくりたい」と伝えて、ブランドガイドラインおよびタグラインの策定に着手した経緯です。

武田:佐藤さんの言葉に対する期待感は大きかったです。サイバーエージェントグループに参画してABEMAでの番組放送や日本武道館での大会を経験し、次はクリエイティブの刷新。「今までにないことが始まろうとしている」という感じがしました。

MZ:ブランド戦略の専門会社であるバニスターとともに、ブランドガイドラインおよびタグラインの策定に取り組まれたそうですね。具体的なプロセスを教えてください。

佐藤:約3ヵ月間の調査フェーズを設け、これまで肌感覚で捉えていたNOAHのターゲットをファクトベースで把握できるようにしました。調査を通じて私が痛感したのは、業界におけるNOAHの立ち位置でした。「どのプロレス団体が好きですか」という設問で、他の団体に圧倒的な差をつけられていたのです。

武田:調査を行う前からある程度わかってはいたものの、数字で改めて突き付けられましたね。

「新しい挑戦をおもしろがってくれるファン」が鍵に

佐藤:調査の次は戦略フェーズです。ここにも約3ヵ月をかけました。調査結果から今のNOAHが抱えている課題点を洗い出し、仮説を立てるのです。「NOAH以外の団体が好きなユーザーと、NOAHが好きなユーザーの差がどこにあるか」など、様々な角度からデータを見て、皆で議論を深めていきました。

 議論した結果、単純なプロレスファンではなく“NOAHがターゲットとするプロレスファン”を新たに定義することになりました。既存のNOAHファンに加えて、今後のNOAHを牽引してくれる新たなファン層の欲求を明らかにしていったわけです。

ファンの特徴と欲求をまとめた資料
【クリック/タップで拡大】ファンの特徴と欲求をまとめた資料(ブランドガイドラインより抜粋)

佐藤:サイバーエージェントがこれまで培ってきた技術力を活かせば、今までにないスタイルでプロレスを楽しんでいただけます。たとえばABEMAで新しい配信形態にトライできるかもしれませんし、試合をデータでビジュアライズできるかもしれません。従来のプロレスをリスペクトしつつ、新しいチャレンジを面白がってくれるファン層の拡大に向けてアイデアを出し合いました。

 調査と戦略を経た後は、戦術フェーズに入ります。今後のNOAHの方向性を一言でユーザーに伝えられる言葉を考え抜いた結果、生まれたタグラインが「Gong your soul」です。プロレスを見た人の背中を押してあげられるような団体でありたいという思いが込められています。

新たに策定したタグライン

武田:Gong your soulは様々なアイデアを出し合った集大成という感じですね。

佐藤:実は「gong」や「soul」は早い段階で候補に挙がっていたのです。その後も様々な言葉を考えたのですが、最終的に皆の意見がgongに寄っていくんですよね。「your」は調査フェーズでファンがNOAHに求めるものを聴取したからこそ出てきた言葉だと思います。プロレスファンの中には「レスラーに自分を投影しながら楽しむ」とおっしゃる方が多い。つまりストーリーに入り込むわけです。だからこそGong “your” soulがしっくりきました。

 戦術フェーズではタグラインのほか、ブランドステートメントとブランドグラフィックを決定しました。

(左)ブランドステートメント(右)ブランドグラフィック
(左)ブランドステートメント(右)ブランドグラフィック

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/11 07:00 https://markezine.jp/article/detail/42163

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