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田中洋が紐解く、ビジネス成功のキーファクター

シニアの生き甲斐を作ることも我が社の責任 “幸福寿命”に本気で向き合う、サントリーウエルネスの視座

シニアこそ、“推し”で体も心も元気になる

田中:Be supporters!について、説明をお願いできますか?

中央大学名誉教授 田中洋氏
中央大学名誉教授 田中洋氏

沖中:Be supporters!とは、シニアの方々、特に介護施設に入居されている方々など、普段は周囲に“支えられる”場面の多い方々が、地元のJリーグのサッカークラブを応援することで”支える”存在になっていくことを目指すプロジェクトで、2020年12月にスタートしました。たとえば、富山県にカターレ富山という現在J3のチームがありますが、ここを地元の介護施設に入居されているシニアの方々が様々な形で応援しています。テレビでワイワイ試合を見ながらワクワクして応援する、ユニフォームを着てみる、特定の選手を“推し”て応援する、など色々な参加の仕方があります。

 また、このプロジェクトは、弊社社員、Jリーグ、クラブ、地域の高齢者施設が一体となって推進しています。2022年にはJリーグ10クラブの地域で、約100施設、延べ2,500人の方々が参加しました。

田中:Be supporters!の効果は、どのようなものでしょうか。

沖中:富山の介護施設に入居されているある方の例です。その方は認知症で幻視やめまいの症状があったのですが、カターレ富山の大野耀平選手の“推し活”を始めたのです。すると、「要介護度が3から1に改善されたように見える」と施設職員が言うほど、元気になられました。

 他にも、普段は自分で足を上げられない方が、“推し”選手の写真を見る時は自ら段差を越えて前のめりになったり、表情が固まってしまっていた方が笑うようになったり。スペイン出身の選手を推している86歳の方が、スペイン語をゼロから学び始めたというエピソードもあります。スポーツチームを応援することで、様々な人と人のつながりが生まれて、シニアの方々のカラダやココロが活性化され、元気になられたという報告をたくさんいただいています

シニアの「生き甲斐」を作るのも、我が社の責任

田中:どのようにしてこの活動を思い立ったのですか?

沖中:私の友人で、元NHKプロデューサーの小国士朗さんから構想を聞いたのがきっかけです。彼が手掛けた『注文をまちがえる料理店』というプロジェクトがあります。これは認知症の方々がレストランのホールスタッフとして働き、その方々に働き甲斐を感じてもらうと共に社会との接点を増やしていくというプロジェクトで、世界最大級のクリエイティブ・アワードである「カンヌライオンズ」で賞を受賞したほど国際的にも評価されているものです。

 その小国さんからBe supporters!の構想を聞いた時、シニアの方々の生きがいを作ることは「人間の生命の輝きをめざして」という社是を持つサントリーが、社会的責任としてやらなければならないことだと感じたのです。人生100年時代、どうしても“健康寿命”が注目されがちですが、大事なのは健康であってもなくても、心をワクワクさせて毎日を生き生きと過ごす“幸福寿命”ではないかということを、Be supporters!に参加する方々から教えていただいている気がします。

田中:たまたま沖中社長も出演しておられたテレビ番組でこの活動のことを知り、素晴らしい取り組みだと感じました。収益事業ではなくても取り組んでいらっしゃることに本気感も伝わってきました。

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本物のブランドは、人間が生きる時間も越えて、社会に価値を還元してゆく

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この記事の著者

田中 洋(タナカ ヒロシ)

中央大学名誉教授。東京大学経済学部講師。京都大学博士(経済学)。マーケティング論専攻。電通で21年実務を経験したのち、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員、中央大学大学院ビジネススクール教授などを経て現職。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/01 09:30 https://markezine.jp/article/detail/42172

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