取り組み初年度「受注ゼロ」でも手応えがあった理由
栗原:その時々で苦労や困難なこともたくさんあったと思いますが、富家さんとしてのターニングポイント、フェーズが進んだと感じた時はいつごろでしたか。
富家:あえて言うのであれば2018年の最初の半年が終わった時です。実はこの半年、アポ数でいえば2017年1年間の1.5倍を獲得していたんですが、受注はゼロでした。
リードタイムが半年以上かかる商材で、実際に進んでいた商談も見えていたため「今は成果がゼロですが、今後確実に成果が出ます」とはっきり説明できたんです。そもそもマーケティングチームの目標に「受注」を据えたこと、そして結果を「ゼロ」としっかり報告できたことが評価され、それほど怒られずに済みました。
この経験から「事業貢献しないと、チームが存在している意味がない」と認識し、受注からバックキャストでKGI・KPIを作れるようになったことは、振り返るといい一歩だったと思います。
栗原:受注への貢献を意識していないマーケティング組織も多いですからね。ターニングポイントと言えば、現在の全社マーケティングに異動されたことも大きいように思いますが、その点はいかがですか。
富家:おっしゃる通りです。それまでは事業部内チームとして、営業の方とも距離が近く、やりたいことがあれば翌日にはできていました。今は全社という立場なので、関係者との関わり方や自分たちのマインドセットを変えないといけないと感じています。
それともう1つ、事業カットと機能カットのチーム構成を実現できたことも大きかったです。事業に紐づくマーケターと実行する機能を分けた理由は、マーケターは責任を持って必要な施策を企画し、実行する意思決定ができる役目に特化できると考えたからです。たとえば、数字のギャップを目の前にして「あと1回ウェビナーやりたいけれど、仕事が増えてしまう……」とジレンマに悩まされることはよくありますよね。
マーケティングセンターの役割を考えるにあたって、各事業部の方たちに「やりたいことをできることに変えるためのパーツを提供しよう!」と考えたのは、この経験が大きかったですね。
「課題が見える」ことが現時点での大きな成果
栗原:全社マーケティングの取り組みについて、現時点での定量的な成果についてはいかがですか?
富家:2022年10月、コニカミノルタジャパンとしては初の大型のカンファレンスイベント「KONICA MINOLTA Empowerment Conference 2022」をオンラインで開催し、目標だった1,800人を集客できました。
これは3日間のイベントで外部の方もお呼びし全22セッションを開催しました。すべて自社の社員が関わってコンテンツを準備して発信しました。これはコニカミノルタジャパンとして大きな取り組みになったと思っています。
ただカンファレンスイベントなので、商談や受注という観点では、厳しい結果になったと言わざるを得ません。結果を振り返る中で、そもそも成果が出るオペレーションが組まれていないという課題に、後になって気が付きました。マーケターとしては反省すべき点が多くあるのですが、1,800という大量のリードを獲得したからこそ見えた課題は多数あり、次につなげられている点はよかったと思っています。

富家:また、今後狙うべきターゲット企業を明確にし、ホワイトスペースを明らかにした上で、そこに対してブランディングをしてきたことも成果の1つです。
弊社のとある事業では、IR関連の戦略策定とWebサイト制作が得意領域です。自社で株式上場しながら発信活動を展開し、制作機能も備えている会社は少ないです。そこでIR・サステナビリティに関わる方を招いたイベントを毎年開催して、IRに関するコニカミノルタの取り組みや、関連する最新情報をお届けしています。
これらは自分たちが持っている強みを理解し、ターゲットであるIR・サステナビリティ担当者へ認知獲得とリード創出を図り、その施策をきっかけとして商談や受注をつくる、という成功事例になれたと思っています。