みんなで「これまでの普通」を塗り替えていきたい
MZ:読み進めていく中で「自分はどうだろう? あの人はどうだろう?」と考えるきっかけも随所にありました。「Let’s Talk Gender」を公開して、どのような反響がありましたか?
永野:ポジティブな声がたくさん寄せられており、制作チーム一同、とても嬉しく思っています。LGBTQ+当事者から「色々なジェンダーについて知ってもらえる、このようなサイトがあるのは心強い」というコメントをいただいたり、当事者以外の方から「このサイトを教科書にしてほしい」というコメントがあったりもしました。我々も、「Let’s Talk Gender」に書かれている内容は、大人も子どもも含めて、社会に広げるべきものだと思っています。

また、「Tinderって意外と真面目なんだね」などと、Tinderがこうした取り組みを行うことに対する意外性も少なからずあったようです。
「Let’s Talk Gender」は、「Let’s Talk Consent」というサイトが元にあり、ここではコミュニケーションの基礎である“同意”について考えるコンテンツを掲載しています。いずれのサイトにも共通しているのは、“リスペクト”が大事であるというTinderの考えです。Tinderを利用する目的は人それぞれだと冒頭で申し上げましたが、だからと言って、メンバーへのリスペクトなしに遊び目的で使ってもよいものではありません。「Let’s Talk Gender」が、Tinderのベースにある考えを理解し、Tinderのイメージを変えるきっかけにもなったようなので、取り組みとしては成功だったと思っています。
MZ:広告業界でも、近年、多様なジェンダーとどう向き合うかという議論が深まっています。
永野:こういった問題は、我々だけでやれることにはどうしても限界があります。社会には、当たり前とされている思い込みや価値観、暗黙の決まり事がたくさんありますが、「果たして、それはこの先もずっとそうあるべきことなのか?」という問いを、ぜひ広告を通して社会に投げ掛けていただきたいです。広告で描かれる“普通”のイメージや価値観は社会に刷り込まれますし、見方を変えると、これまでの社会の常識を打ち破っていくような力がマスコミや広告にはあると言えます。「自分は普通じゃないのかな」なんてことをそもそも思わせない、そんな社会をみんなで作っていきたいですね。
MZ:最後に、Tinderの今後の展望をお聞かせください。
永野:様々な人と出会い、多様な価値観に触れてもらいたいというTinderの思いは創業当初から変わっていません。マッチングアプリがなかったら出会っていなかった人との出会いを通して、多くの人に、あらゆる可能性への扉を開いてもらえればと願っていますし、これまでと変わらず、社会や人々、特に若年層の変化、今の在り方に寄り添って、プロダクトをアップデートし続けていきたいと思っています。