単一評価でなく、複合的な効果分析が必要
――効果測定についてもうかがいたいと思います。特にテレビCMとCTV広告の総合的な効果測定が課題になっている企業も多いですが、どのような解決方法があるとお考えですか?
CTV広告の評価は非常に重要な一方で、まだまだ科学されきっていない探索領域です。現時点でセプテーニでは、大きく3つのアプローチをとっています。1つ目が、テレビとデジタルそれぞれに接触したユーザーに対してアスキング調査を実施する。2つ目は実際に配信をした時間帯とKPIの元となるアクションを分単位でのログベースで比較する。3つ目が統計的なアプローチです。これは因果推論の取り組みが主流です。具体的にはテスト地域を定めて、テレビCMだけの地域・CTV広告も実施する地域の傾向を比較して、CTV広告自体の成果を導き出します。
どの評価方法を採用するかに関しては、広告主様の課題や、CTV広告を出稿する理由・KPIから逆算しています。必ずしも3つの分析をすべてを行う必要はありませんが、単一の効果測定だけでは事足りないこともしばしばあります。複合的な観点からキャンペーンの結果を評価して、次につなげていく。そんな効果分析が今は必要だと考えています。
また発展途上だからこそ、ソリューション開発が鍵だとも感じています。適切に効果を届けること、効果を証明することが重要です。当社でも注力中ですが、これは業界全体で捉えるべき大きな課題だと考えています。
体制作りも無視しては通れない
――オンオフ統合の視点で考えると、広告会社と広告主が信頼関係を築き、データを統合して評価をしていく必要もあるかと思います。その点はいかがでしょうか?
そうですね。セプテーニでは2022年、統合マーケティングを実施するために「5Cモデル」(※)というフレームワークを考案しました。その中で、「Co Creation(コクリエーション)」=社内組織や代理店同士で共創体制を作っていくことを提唱しています。
また、企業によっては部署ごとにKPIが違う、デジタル広告とテレビCMを扱う部署が分断されているといった組織の課題が残っているケースもまだあります。企業内での連携も「Co Creation」の重要なポイントであり、戦略・配信・指標の連携や統合においても欠かせない視点かと思います。
少し話題がそれますが、テレビデバイスとスマホは直接的にデータが紐付かないので、計測には大きな壁があります。また、いかに広告主様のビジネスに関連付けて広告の成果を論じるかを考えると、広告主様が持つファーストパーティデータの活用も場合によっては大切になってきます。セキュリティ面を考慮すると非常にハードルが高いですが、Cookieの規制も相まって、見えていたものが見えなくなってきているのが実態です。広告主様の社内でも宣伝に関わる部署と顧客管理の部署が異なり、施策上の連携があまり進んでいないという声も聞くことがありますが、見えていたものが見えなくなったままではなく、見えるようにするために組織連携をお手伝いさせていただくことも大切にしているポイントです。
※5Cモデルについては『オンオフ統合実践の秘訣は「3つのフェーズ」と「5つのC」 電通×セプテーニに学ぶフレームワーク』で詳しく触れています。