緊急事態宣言下の特需に惑わされない
髙口:料理に使えるスナック菓子路線をしばらくは愚直にやろうと思っていたところで、訪れたのがコロナ禍です。コロナ禍初期の緊急事態宣言下、ベビースターラーメンは売上が伸びました。スナック菓子やカップ麺は即食性が高く非常食としても使えるため、買いだめする人が多かったのです。

髙口:しかし、この成長カーブは戦略的に描いたものではなく、外的要因によって突発的に上がったもの。「長続きしない、需要の先食いをしているだけだ」と直感的にわかっていました。実際、緊急事態宣言が解除されて自由に買い物に行けるようになると、カーブは同じ角度で元の状態に戻りました。
鈴木:チャネルの変化はどうでしょう。コロナ禍でEC寄りになりませんでしたか。
髙口:顕著な数字の変化はありませんでした。お菓子のEC購入と聞くとケース買いをイメージする方が多いかもしれませんが、スナック菓子は衝動買いかつバラエティシーキングの商材です。同じ商品をまとめて買うというよりも、メーカーを問わず様々な種類の商品を試すニーズが顕著なのです。
振り返ってみると、コロナ禍でスナック菓子の消費シーンが大きく変わることはありませんでした。料理に使えるスナック菓子路線でコツコツ積み上げてきたものが、コロナ禍初期の買いだめ需要で一瞬止まったものの、「平時に戻った時にやり直せば、再び登山が始まる」と我々は考えていました。
二つの作戦と効果検証のコツ
髙口:これまでの話をまとめると、コロナ禍以前もコロナ禍に突入した後も、王道のスナック菓子として食べてもらうための「思い出させる作戦」を土台にしつつ、新たに「料理に使えます作戦」を乗せた2段階作戦を続けてきました。王道路線を大切にすることは、経営の安定性を高めるためにも欠かせません。どれほど2階の「料理に使えます作戦」でたくさんの水を入れても、1階部分で水漏れが起こってしまっていたら水は溜まらないですから。
リーボックとスニーカーを製作したり、クラフトビールを醸造する網走ビールとベビースターラーメン専用のビールを開発したりと、意外性のある産業とのコラボも定期的に実施しました。これらのコラボによって「そういえば最近ベビースターラーメンを食べていないな」と思い出してもらう努力を続けていたわけです。
鈴木:各作戦のKPIはどのように設定しているのでしょうか。
髙口:思い出させる作戦では、リーチを重視しています。具体的には次のようなKPIです。
1.コトの認知率を見る
2.認知の質を見る(ネガティブな認知ではなく、「面白い」「やるじゃん」といった質を担保できるか)
3.Twitterの件数など定量の確認
4.ブランドの純粋想起が上がるかを確認
5.商品回転をインテージで見る
6.最後に売上・ROASを見る
髙口:一方の料理に使えます作戦では、シンプルに「料理に使えるという事実の認知率」と「継続率」を見ています。調査の質を担保するためにも、なるべく固定的な予算と方法でトラックするのがポイントです。また「購買意欲」は聞かないようにしています。「買いたいですか?」と聞かれたら、多くの人は「買いたい」と答えるからです。質問自体がバイアスだと思います。
