DOOHだから捉えられるモーメントがある
──広告プランナーとして、高橋さんはDOOHの媒体特性や役割をどのように捉えていますか?
高橋:先にOOHの強みについて触れておきたいのですが、私はOOHには「話題化に強い」という特長があると思っています。特に、コロナ禍を経た昨今はOOHが再燃していて、最近話題になった広告コミュニケーションの中にOOHが挙げられることも多くなっているように感じます。ルイ・ヴィトンと草間彌生さんがタイアップしたOOHは非常に大きな話題になりましたし、直近ではアイドルグループを起用したOOHが渋谷に掲出され、そこに人が集まり過ぎて広告が撤去されたというニュースもありました。話題化、態度変容(認知、商品理解、購入)、店舗・店頭誘導、ブランディングと、使い方次第で広告媒体としての役割がかなり多岐にわたる点も特長だと考えています。
こうしたOOHの本来の媒体特性に加えて、DOOHには「モーメントを捉えやすい」「広告接触者のインサイトを高めやすい」というポイントがプラスされています。屋外には生活者の多様なモーメントがあり、多くの場合、自宅にいるときよりそのモーメントははっきりしているからです。たとえば、ビジネスパーソンがターゲットの広告なら、スマートフォンで時間帯を絞り込んで広告を配信するより、通勤の時間帯のトレインチャンネルに配信するほうが、ターゲットがビジネスモードになっている瞬間を押さえられるはずです。
ソリューション・プランナー 高橋太希(たかはし・たいき)氏
2011年電通入社。新聞局を経て、現在の第2統合ソリューション部に。食品・飲料メーカーやスタートアップ、BtoBなど幅広い業種業界で、オンオフ統合のプランニングを行っている。
──DOOHだから捉えられる生活者のモーメントがあるということですね。実際に、DOOHでターゲットを定めて配信し、高い効果が得られた例はありますか?
高橋:味の素の『鍋キューブ』という商品の広告を、DOOHの天気連動配信で展開した例があります。鍋キューブは鍋を食べるときに用いる調味料ですから、冬の寒い日に需要が高まります。スマートフォンを見ているときより、屋外で寒さを感じているときのほうが、鍋キューブの広告を見たときに「温かい鍋を食べたい」というインサイトを高められるのではないかという仮説を持って施策の効果検証を行ったのですが、結果はやはり仮説のとおりでした。
具体的には、DOOHに接触した人と非接触だった人を対象に、認知・商品理解・購入意向の3つの項目で調査を行ったところ、広告接触者の購入意向は非接触者の138%になっていました。消費者のインサイトが高まる瞬間=モーメントを捉えるという点において、DOOHは効果的であると思います。
小林:同様の事例は他にもあります。以前、「晴れ×気温が何℃以上」というタイミングでアルコール飲料のDOOHを配信し、天気連動による配信の効果を検証したことがあるのですが、このときも、天気連動で配信した広告のほうが態度変容、特に購入意向のリフト値が高く出ていました。
能動的に使う媒体(スマートフォンやテレビなど)で見る広告とは違い、DOOHは街で偶然、受動的に見かけるものです。近年、広告においてもセレンディピティの有効性が注目されています。時間帯を絞る、天候と連動させるなどして、消費者と広告の偶然の出合いを意図的に作っていく――LIVE BOARDではこれを「マネージド・セレンディピティ」と呼び、消費者が無意識的にDOOHからポジティブな影響受けるような状況を作ることにトライしています。
