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マーケティング最新事例2023

YouTube広告を活用し、高いビジネス効果へつなげた8つのキャンペーンとは?

ファストCMで効率的なリーチを実現した、損害保険ジャパン

 「Best Target Reach部門」は生活者のインサイトやメディアの特性を捉え、適切なメディア、デバイス、広告フォーマットを組み合わせることでビジネスターゲットへのリーチ効率を高め、目標を達成したキャンペーンが対象だ。部門賞には損害保険ジャパンの「ファストCM『かけがえのない⼈⽣に、たしかな安⼼を。』篇」が選ばれた。

損害保険ジャパン/ファストCM「かけがえのない⼈⽣に、たしかな安⼼を。」篇

 保険はライフステージの変化とともに意識されるため、若い世代には自分ごと化されにくい。そこで同社は、MF1層(20~34歳男女)に対して若年層の価値観に寄り添い「信頼性・安心感」を提供する会社であることを伝えるため、ターゲット層への効率的なリーチとメディアでの露出をKPIに今回のキャンペーンを実施した。

 タイムパフォーマンス志向や動画の倍速視聴といった、若年層の価値観や習慣に寄り添う企業姿勢を表現するべく、「ファストCM」を制作。通常の動画広告を1.25~2速に早回しにしたクリエイティブで表現した。また、動画公開前に「若年層の動画視聴習慣に関するWEB調査」を発表。ファストCMが若年層の価値観に基づくという根拠を用意し、タイパの価値観と、動画の内容を絡めてテレビ番組の露出を狙った。

 結果、年度の施策では視聴単価2.30円/視聴率40.7%だったところ、聴単価1.97円/視聴率46.8%と効率的なリーチを実現。キー局の5番組を含む全13番組・130以上のWebメディアで取り上げられた。好意度も非広告接触者に比べ17%増加した。

 部門の代表審査員を務めた佐々木 亜悠氏は時流をつかんだ表現を評価するとともに、内容を限られた秒数に伝えるためにどうするかを考えた際に、「倍速にすればいいという発想に、やられたと感じました」と語る。

「個」の時間に寄り添い754万回再生を達成した、ほろよい

 「Creative Effectiveness部門」は多様化する生活者インサイトを的確にとらえ、クリエイティブの力で視聴者の共感や議論を生み出すことによってビジネス目標を達成したキャンペーンを表彰する。

 同部門の代表審査員を務めた小島 翔太氏は、どの作品も力作揃いだったと述べつつ「そもそもクリエイティビティが発揮される場所まで見るか? 飛ばしてしまうかもという議論も起きました」とYouTube広告らしい選定がなされた様子を語る。結果、部門賞に選ばれたのはサントリーホールディングスの「ほろよい飲んで、なにしよう︖」だ。

サントリーホールディングス/ほろよい飲んで、なにしよう︖

 ほろよいは2009年発売のロングセラー商品だが、一方で、ブランドの価値が曖昧になっていた。その中でコロナ禍に入り、生活者からは大人数でお酒を飲む機会が減り、ほろよいへの需要も低下した。

 そこで、同社はアルコール度数3%のお酒、ほろよいが持つ価値を再定義。「酔いすぎずに、自分だけの時間を楽しむことができる」という価値を伝えることにフォーカス。コロナ禍で生まれた「個」の時間に寄り添うべく、20~30代を中心とする全世代に向けてキャンペーンを実施した。

 カルチャーと仲良くなるという戦略を立て、実写とアニメーションを両立させた映像と、幅広い世代の音楽マッシュアップや歌い手を採用し、クリエイティブを制作。YouTubeで一定の出稿を続け認知を高めながら、テレビCMも出稿。CM曲サブスクで配信するなど盛り上がりを作りSNSでのトレンド入りを目指した。また、YouTubeに誘導することで、再生数を伸ばし話題化を支えた。

 結果、YouTubeで754万回再生、Twitterフォロワー数4万人増を達成。さらに、CMを元にした作業用BGM集や二次創作が次々と生まれている。

 また、スキップできるメディアでありながら心地よく最後まで見続けたくなる仕上がりと、単なる動画広告ではなくコンテンツとして昇華されている点が評価された。審査員のワトソン・クリック 山崎 隆明氏は「ゴールに向かって目的が達成されたかと左脳的なことも交えながら審査をしますが、この作品に関しては、なんか気持ちいいよねとまずは右脳が反応しました」と語る。

「いかに命を守るか」の会話を創出した、⽇本⾚⼗字社

 キャンペーンの中には、ブランドパーパスを表現し、社会的意義のあるコミュニケーションを目的に展開される場合もある。「Force for Good部⾨」はそのようなキャンペーンを表彰するためのものだ。

 ADKマーケティング・ソリューションズの印南 智史⽒は、「ブランドらしさと社会を良くする掛け算は何によってできるかを議論した時に、表現としての豊かさだと気付かされた」と語り、「世の中に対してコミュニケーションすること自体が社会に影響を与えます。見た人がどんなことを受け取るのかを考えていただけると嬉しい」とForce for Goodへ向けることを提唱する。

 そして、今回部門賞を受賞した作品は、⽇本⾚⼗字社の「おうちの中のモンスター」だ。「命を守る」という⽇本⾚⼗字のパーパスに基づいて制作された作品で、普段は役に立つ家具が災害時に襲いかかってくることを「モンスター」になぞらえ寓話化し、防災意識の高まる9月にアニメーションで伝えた。

⽇本⾚⼗字社/おうちの中のモンスター

 地震によるケガの原因の約30~50%が家具類の転倒・落下・移動によるものだ。特に大地震であればあるほど、家具は命を奪う凶器に変わる。震災時に助かる確率を上げるためには「おうちの中の危険」をどれだけ減らすかが重要だ。そこで、家の中のどこに危険があるか「気づき」を促し、実際の「対策」の必要性を認知浸透させることを目的にキャンペーンを展開。TwitterとYouTube TrueViewインストリーム広告で動画を配信し、3分という長尺での丁寧な訴求を実施した。

 動画の再生数・視聴数をKPIに設定したが、両メディアでの総動画再生回数は約1,148万回を達成。完全視聴数も363万回を達成した。また、Twitter上では「家族で視聴した」「子どもが食い入るように見ていた」「視聴後家族で対策を話し合った」というコメントも多く、この動画によって、いかに命を守るかという会話を家庭内で発生させた点も高く評価された。

38万回再生・高評価99.5%、クリエイターとコラボした電話リレーサービス

 クリエイターとのコラボレーションもキャンペーンにおいて無視できない。YouTubeで動画を投稿するクリエイターと企業・ブランドがコラボレーションを実施し、高いマーケティング効果を獲得したキャンペーンを表彰するのが「YouTube Creator Collaboration部門」だ。

 部門代表審査員のゆうこす氏は「クリエイターとのコラボは、クリエイターのファンのことを考えることが重要」と語り、企業のメッセージを伝えるだけで終わらないことの大切さを指摘する。

 今回部門賞を受賞した⼀般財団法⼈⽇本財団電話リレーサービスの「ずっと無理だと思ってた電話ができるようになりました。」は、クリエイターとサービスのマッチングを考える上で良い例になるだろう。

⼀般財団法⼈⽇本財団電話リレーサービス/ずっと無理だと思ってた電話ができるようになりました。

 「電話リレーサービス」は2021年に開始した公共インフラで、聴覚や発話に困難のある人(以下、きこえない人)と、きこえる人(聴覚障害者等以外の人)を、通訳オペレータが手話や文字と音声を通訳し「電話」でつなぐサービス。今回、認知率を高めるとともに、サービス内容を理解する人を増やすためにキャンペーンを展開した。

 テレビCMとYouTubeで30秒の広告を用意してサービス名と概要を知ってもらい、CMでは伝えきれない内容を、きこえない両親を持つYouTubeクリエイターの奏太氏とコラボレーションした動画で伝えるというもの。サービスの詳細を説明ではなく物語として知ってもらうために、コラボ動画が受け皿になった。

 動画の内容は「これまで子ども(奏太氏)に電話をお願いしていた母親が、プリントケーキを電話リレーサービスで注文し、夫(父親)の誕生日をサプライズで祝う」というもの。はじめて電話リレーサービスを使う過程に奏太氏が寄り添い、電話をする様子や、電話をしたことで広がる世界をドキュメンタリーで描いた。

 KPIは奏太氏が運営する、登録者数約25万人のチャンネル「かなたいむ。」の平均動画視聴数とコメント数を超えること、および高評価90%以上に設定。施策の結果、チャンネル平均再生数の約4倍の38万回再生。高評価も99.5%(7,062件)と、チャンネル史上最高を記録。サービス理解と好感のあるコメントも346件集まった。

 コムドットのヤマト氏は「家族というコミュニティの中で自然なかたちで訴求したいものを扱っている。広告というよりも、動画コンテンツとして見られた」と評価した。

 動画を制作した奏太氏は「父母は電話を使えないと僕自身も思っていました。でも、諦める必要がないと今回、知ることができました。耳がきこえない人ではなく、普段は当たり前に電話を利用している人に動画が届くことで、『誰もが諦める必要がない社会』を感じてもらえたのではないかと思います」と動画が届く意味を語る。

 以上8作品が「YouTube Works Awards Japan 2023」の受賞作品だ。

 審査委員長の細川美和⼦⽒は「マスで届くCMは思いもかけない出会いで外の世界に広がっていくことが魅力。一方で、YouTubeのように相手を絞ることで、新しい出会いを必要としている人に情報を届けられる」とマス広告とデジタル広告の違いに触れ、「アイディアがあれば、限られた成約の中でも効果的に届けられる」とYouTube広告の可能性を語りアワードを締めくくった。

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伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/23 10:23 https://markezine.jp/article/detail/42547

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