「ついやってしまう」をデザインする8つの要素とは?
「ついやってしまう」無意識な瞬間UXを具体的にデザインする8つの要素は、以下の通りとなります。

初期設定
「初期設定」は、単純で導入が比較的容易であるうえ、高い導入効果が期待できます。たとえば変えるのは面倒くさいと思う「現状維持バイアス」、詳しい人が勧めてくれたという「権威バイアス」、変えるほうが損になる気がする「損失回避」、折角勧めてくれたからという「返報性」など、人間の認知の歪み(バイアス)に起因します。
具体的には、複数の選択肢がある中で、あらかじめ選択してほしいものを基本として設定しておく手法です。以下のようなケースで活用されています。
・健康的な食べ物を食堂の目立つところに置く
・スーパーのレジ袋を無料では配布せず、欲しい人は購入が必要
・Webサービスの会員登録時にメルマガ希望のチェックボックスが「YES」で設定されている
単純化/容易化
「単純化/容易化」は、促したい行動を取るための方法自体をシンプルにすることで行動変容を導きます。行動の選択肢がある際に、人間は複雑・難解なものを敬遠する傾向にあることを利用しています。この要素は、以下のようなケースで活用されています。
・電子レンジで温めるだけで作ることができる料理
・会員登録を「10秒で完了」と訴求し、入力すべき情報を必要最低限に留めるWebサイト
同調
「同調」は、他者の行動や考え方に合わせる「同調バイアス」や当事者からの情報よりも他者が介した情報のほうが信頼しやすい「ウィンザー効果」などを活用して行動変容を促します。
対象者が当該行動に関して少数派であることを訴求し、「自分もやるべき」という思考を喚起し、行動につなげる方法です。たとえば、以下のケースで活用されています。
・「10人中9人が納期限通りに税金を納付しています」と税金未納者に通知をする
・「90%以上の人がこのプランを選んでいます」とサービス選択の際に表示する
情報開示
「情報開示」は、選択してほしい選択肢におけるメリット(もしくは選ばないデメリット)を対象者に開示することで行動変容を促します。
この要素は「初期設定」とも類似しますが、詳しい人が勧めてくれたと思う「権威バイアス」や変えるほうが損になる気がする「損失回避」といった人間の認知の歪みに起因します。ケースとしては、以下があります。
・不法駐輪を防ぐため「不要自転車につきご自由にお持ち帰りください」の看板を設置し、駐輪すると誰かに持っていかれてしまうことを開示
・1個単位で買うよりもまとめて買ったほうが安くなる商品に、単品購入価格とまとめ買い価格を併記
わかりやすさ
「わかりやすさ」は、視覚などの五感を刺激することで注意を引き、行動変容を促します。具体的には、見た瞬間に一目でわかるビジュアルや聞いた瞬間に理解できる音を活用し行動につなげます。たとえば以下のケースで活用されます。
・男性/女性用がわかるトイレのピクトグラムアイコン
・レストランのメニューのテキストに併記される料理の写真
・駐輪場に引かれている白線
・緊急地震速報のアラート音

リマインダー
「リマインダー」は、行動変容を促したいタイミングで通知を行うことで行動を喚起することです。以下のような具体例が挙げられます。
・休憩時間終了の3分前にチャイムを鳴らし、時間通りの着席を促す
・目的地の付近に近づいたことを知らせるナビゲーションシステム
フレーミング
「フレーミング」は、対象者が望ましい選択を行うため、情報を整理し選択しやすい状況を作ることです。なお、ナッジ理論で提唱されているフレーミング(情報をどう表現するかによって見た人の受け止め方が変化すること)という考え方を、実務的に情報整理と解釈しています。
具体的には、選択肢を絞り込み、中間案を選んでもらう方法や、雑多な情報をカテゴリー化して選択してもらう方法が挙げられます。例として、以下のケースで活用されています。
・並/上/特上の3種類の食事メニューを用意する
・旅行予約サイトや不動産サイトで、地域/金額/設備などカテゴリーごとに絞り込みができる
エラー予測
「エラー予測」は、対象者が取ってしまう間違った選択肢を想定し、予め防いでおくことで結果的に望ましい行動を促します。以下のようなケースで活用されています。
・呼気アルコールインターロック(飲酒しているとエンジンがかからない自動車)
・カードの抜き忘れを防ぐため、先にカードを抜いた後に現金が出てくるATM