あふれるタスクの手落ちを防ぐ進めかた
ここまで紹介したタスクは、撮影準備のほんの一部。実際には、大小合わせてさらにたくさんのタスクをこなしていく必要があります。最後に、それらのタスクを抜け漏れや着手遅れが起きないよう進めるコツを共有します。撮影当日を迎えるまでのおおよそのプロセスを、3つのステップに分けてみました。
STEP1|撮影チームのアサインと撮影日の決定
企画が決まったら、フォトグラファーや撮影チームのメンバーをアサインし、撮影日のスケジュール調整を行います。そして撮影当日を最終マイルストンに見据え、そこまでにどのようなタスクがどの時点で完了していないといけないかという見通しを立ててから準備を進めます。先に大まかにでも見通しを立てて、途中過程でのマイルストンを置いておくと、タスクの着手遅れを防ぐことができます。
STEP2|定例打ち合わせの設定
次に優先して行うのが、定期的な打ち合わせ日程の確保。撮影日までに行うフォトグラファーや社内外メンバーとの打ち合わせ日程すべてをあらかじめ押さえます。たくさんの関係者がいればいるほど、その日程を確保するだけでも意外と手がかかるもの。「打ち合わせが必要だと気づいたときには予定が合わず手遅れ」という事態を避けるために行っています。
打ち合わせの頻度や量は、プロジェクトに合わせて調整します。私の場合、大規模な撮影プロジェクトで1週間の遠方ロケに15名ほどの撮影チームで取り組んだときは、社内メンバーとは毎日、クライアントとは週1回の定例打ち合わせを行っていました。
STEP3|各タスクの推進担当を決める
複数名の社内メンバーで取り組む場合は、各タスクの推進担当をバイネームで決めておのおの推進し、定例打ち合わせで進捗を共有しあうようにしています。せっかく複数名で取り組んでいても、気づいた人が気づいたタスクに何となく対応する状態だと一部のメンバーに負荷が集中してしまったり、やるべきタスクが手落ちすることにもつながるため、役割分担はしっかり行うよう心がけています。
撮影日を迎えるまでには、細部にわたって多くの検討、相談、決定を繰り返し、その決定・未決定の状況が日々変わっていきます。準備期間中はそれらの進捗管理をしながら、その過程で見えてくる派生タスクや必要なプラン変更を逃さないようにしています。
そのためにするべきことが「定期的な打ち合わせでのホウ・レン・ソウ」「やるべきタスクが放置されないような役割分担」「撮影ラフや香盤表といった各資料への検討事項の明示化」です。それら1つひとつは、とても些細なことで特別なテクニックが必要なものではないかもしれません。ですがそれらを根気よく積み重ねていくことで、それまで資料のうえで思い描いていた撮影プランの実現に近づくのです。
連載第2回の「準備編」はここまで。次回はいよいよ「当日編」です。緊張するのが当たり前の撮影現場で、スマートかつ納得のいくディレクションをするためのコツや考えかたをご紹介します。お楽しみに!