マーケ担当者の9割が重要視する「データ活用」
セッションの冒頭でトーチライトの小田野氏は、注目すべき点を3つ紹介した。1つ目が、企業のマーケティングに関わる人に対して採ったアンケートでは、データが重要だと答えた人が9割以上にのぼったこと。2つ目が、データ収集・統合まで完了した企業は2022年から2023年の1年間で1.6倍に増加したことだ。これらのことからも、企業が持つデータには重要な役割を担っていることがわかる。
一方で、データ分析やその後の利活用までステージを進めた企業の割合は減少傾向にある。これが3つ目だ。多くの企業がデータ活用の重要性を理解しつつも、収集したデータをどうしていいかわからない状態に陥っているのだ。
顧客から見ると、情報爆発と言われる時代の中でも自分のニーズに合う良質な情報やコンテンツは強く求められている。だからこそ、顧客の視点を顧客体験の設計や戦略に反映するために、データ活用は不可欠な存在だ。
「企業は顧客に体験の場を用意し、顧客の行動データを蓄積・分析し、そのデータを活用する。このサイクルを回し続けることでより良い顧客体験の提供につながり、企業・ブランドに対して顧客に好印象を与え、購入などの行動につなげることができるのです」(小田野氏)
データ活用でLINEが優れている3つの理由
では、どうすればそのサイクルを上手に回し続けることができるのか。顧客視点でマーケティングを行うために、同社が勧めるのがLINEだ。サイクルにおける「顧客体験」「顧客行動」「データ活用」の3つのフェーズそれぞれにおいて、LINEは大きな強みを持っている。
まず1つ目は「顧客体験」での強みだ。LINEは9,200万人の国内月間アクティブユーザー数を抱えており、これは国内2位のX(旧Twitter)の4,500万人を倍以上離す数字である。LINEはもはやインフラレベルの大規模プラットフォームであり、多くの顧客の体験の場となり得る。
2つ目は「顧客行動」のフェーズにおける強み。LINEは、企業が顧客に1対1でコミュニケーションできるプッシュ型のメディアだ。メールマガジンと比べ平均開封率やクリック率に優れているデータが出ており、顧客の大きな反応が期待できる。
3つ目は、本セッションのテーマでもある「データ活用」での強みとなる。LINEでは一人の顧客に対し一つのIDが割り振られる。これを活用し、顧客一人ひとりのデータを管理することが可能だ。
「コミュニケーションのプラットフォームであり継続的に顧客の接点を保てる点、IDでユーザーの管理・蓄積・分析ができる点など、顧客一人ひとりに合わせたCX(顧客体験)を実現できるプラットフォームとして、LINEは最適だといえます」(小田野氏)
ゼビオグループがLINE活用を決めた、3つの理由とは
セッションでは、実際に公式LINEを活用し成果を上げたゼビオグループの事例を紹介。同社はスポーツ小売業として、「スーパースポーツゼビオ」「ヴィクトリア」「ゴルフパートナー」など、全国に700店舗以上を展開している。
マーケティング部で主にEC事業を担当する坂(ばん)氏は、同社における顧客行動のゴールを「商品を買っていただくこと」「サービスを体験いただくこと」であると説明した。続けて、同社がLINE活用に踏み切った理由として(1)顧客にとって一番身近なメディアであること、(2)1to1のコミュニケーションがとれること、(3)Cookieレスを見越したデータ活用ができることの3つを挙げた。
「ゼビオグループが公式LINEをスタートさせたのは2021年4月と、まさしく新型コロナが流行し始めた中です。実際、コロナ禍で急速に顧客のデジタルシフトが進みました。そういった環境下で顧客との新しい接点を模索する中で、前述の3つの理由からLINE導入に至りました」(坂氏)
理由のうち、「(1)顧客にとって一番身近なメディアであること」に関しては、先駆的に活用を進める競合他社もいる中、後発であることから活用事例を生かしつつ運用。「(2)1to1のコミュニケーションがとれること」は、現在のデジタルコミュニケーションにおいて大前提の条件だと坂氏は指摘した。
さらに「(3)Cookieレスを見越したデータ活用ができること」においても、今後オウンドメディアの強化は必須であり、1to1コミュニケーションを実現できてデータ拡張性があるメディアである点は非常に重要だと同氏。それらをすべて網羅できるのがLINEだったのだ。
1年で約170万人の新規登録者を獲得!
ライバル企業は4~5年前に導入していたこともあり、導入1年目の同社での至上命題は、新規友達登録ユーザーの拡大だった。新規顧客の集客プラットフォームとして、集客施策や運用基盤の構築を実施。具体的には、まずECサイトに来訪した顧客に対してクーポンを促し、LINEの友達になってもらった。
その5ヵ月後からは、店頭での集客を実施。店舗に来客しLINEのお友達登録をした人に対し、その日に店頭で使えるクーポンを配布した。さらにその1ヵ月後には、公式LINEスタンプの配布を実施したという。
同時に運用基盤の構築面では、どんな企画であれば良い顧客を集客できるのか、あるいはブロックされないのか。配信の内容はどのようなものが最適なのか、デザインはどうすべきか、などの検証・分析を行っていった。その結果、同社は開始から1年で約170万人の新規登録者の獲得を達成することができた。
「LINEはなかなか個人情報が取れないメディアです。アンケートによってお客様の情報の補足を行ったり、ECや店頭で使う会員IDとLINE IDの連携開発をしたり。また既に導入していたMAを使った自動配信などの企画など、順番に行いました」(坂氏)
売り上げが約3倍に!ゼビオグループが進めたデータ活用の3ステップ
2年目からは、1年目のフェーズで取得したデータの検証を行い、集客やメッセージ配信の効率化を実施。「量の次は質を追いかけなければなりません。2年目は徹底的に効率化を行い、LINEアカウント内での黒字化を目指しました」と坂氏は語った。
同フェーズでは、広告は使わずECサイトから直接LINEの友達ユーザーの拡大を狙った。配信の内容は、クリック率や売り上げ実績のある顧客のデータを分析。ターゲティング条件や配信内容の最適化を行い、より少ないコストでたくさんの売り上げにつなげるスキームを整備した。これにより、CTR・CVRともに前年比の2倍以上の結果に。また集客含めて効率化を行ったため、限界利益額は8倍以上の改善となった。
3年目である2023年は、量と質の両方で売り上げ規模をさらに拡大させ、限界利益率の維持を目指している。そのために取り組んでいるのが配信設計の改善だ。2年目に行ったターゲティングによって配信対象者がシュリンクしている状態だったため、一定期間アクションが起きていない顧客に対して開封・クリック・CVの回数によって細かくセグメントをわけた。これにより、休眠顧客の掘り起こしを進めている。
加えて、実行動データの利用も推進している。セール情報などこれまでの一方的な配信とは異なり、顧客ごとの閲覧履歴に合わせた商品の案内が可能に。これにより会員IDの連携をしていない新規顧客に対しても、興味がある商品を直接案内することができる。
上記の施策を進めた結果、購入ユーザーが4倍以上となったほか「4月から6月の同時期で売り上げを比較すると、LINE経由の売り上げが約3倍も成長することができた」と坂氏が述べていたように、確実な成果を生んでいる。
オムニチャネル・リテールメディアへの挑戦
「さらなる成果を生むため、今後もデータ活用に力を入れていきたい」と坂氏は語り、ゼビオグループの今後の課題として、次の2点を挙げた。
1つ目はオムニチャネルだ。店舗ごとのデータを取り込んでいき、LINEを店頭で使ったサービス体験を作っていく。2つ目はリテールメディアへ挑戦する点だ。
「トーチライトさんの素晴らしいところは、パッケージでの提案ではなく、弊社の課題や状況に合わせて柔軟にサポート内容や体制を提案してくれる点。弊社は、私も実務を行うなど非常に少数で運営をしているため、戦略だけでなく、作業部分の細やかなサポートもいただいています。また内製化を目指すにあたり、様々なバックアップも行っていただいているので、知見も社内に蓄積しながら拡大ができています。データ活用で迷っているマーケターはご相談することをおすすめします」(坂氏)
デジタルマーケティングにおいて不可欠なデータ活用。高い質と量でより良い顧客体験を提供できるLINEを活かし顧客の行動を変えていくことが、今後の企業と顧客のコミュニケーションにおいて重要となっていくだろう。
またトーチライトでは、このゼビオグループの事例のようなデータを活用した施策や戦略支援だけでなく、広告・プロモーション面のサポートも対応している。「クリエイティブ制作やユーザーデータをより詳細に取るための外部データの提供などのご支援も可能です。データ活用やLINE導入を考えている企業様をサポートできればと思います」と小田野氏は話し、セッションを締めくくった。
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