なぜMMMを使うのか?約6年使ってきたからこその知見
丸亀製麺は、すべてのマーケティング活動をデータ(数字)で可視化し、その成果を検証できるよう、約6年前からマーケティング・ミックス・モデリング(以下、MMM)を取り入れている。感性×データの二律両立を目指すKANDOドリブンマーケティングの片方の軸を、MMMが担っている。
南雲氏は、MMMを用いている理由について、次のように話す。
「なんのためにMMMを使うのか? 巷では、マーケティング予算の最適配分、ROIの可視化と確認、ブランディング効果やオフライン施策の効果の可視化、短期効果と中長期効果の可視化などがMMM実施の目的として言われていると思います。たしかに、いずれも正しいと言えば正しいのですが、これらは目的としては不十分だというのが私の考えです。MMMを用いる理由は、もっと上段にある『事業を持続的に成長させるため』だと考えています」(南雲氏)
シンプルかつ究極の目的であるが、上記は約6年MMMを実践してきたからこその知見である。というのも、MMMを実践で使える状態にするには、モデルのカスタマイズ&アップデートを繰り返していかなければならない。自社の目的に沿ってMMMを進化させ続け、“使える状態”にしておかないと、宝の持ち腐れとなってしまう。
つまり、MMMを取り入れる目的をどこに設定するかは、思っている以上に重要なのである。実際、丸亀製麺でも、MMM実践においては今日までに様々な試行錯誤があったそうだ。
MMM活用の前に、マーケターに求められる力と役割
もう一つ、MMMを実践する前に重要な前提部分がある。それは、「マーケティング戦略において、どこを、どう動かしたら、どの数値が、どのように伸びるか?」という具合に、事業成長の構造を理解・把握し、自分でコントロールできる状態にしておくということだ。そのためには、「消費者」「自社および自社のビジネスモデルの構造」「自社におけるマーケティング構造」への深い理解が求められる。MMMでは様々な数値が導き出されるが、全体の構造を理解・把握していないと、出てきた数値を活かし切れないからだ。
さらに言えば、消費者インサイトの動向などMMMでは可視化できないものもある。たとえば、ブランド選好性を高めようとする時、消費者におけるブランドイメージの状況やインサイトの動向などはMMMでは説明できない。このようにMMMでは可視化できない部分も含めて、正しく理解・把握しておかなければ、最終ゴールである「事業の持続的な成長」は叶わない。
事業の持続的な成長にコミットし続けることがマーケターの役割であるとすると、マーケターには下図のような力が求められてくる。
