顧客と信頼関係を築くプロセスは、店頭もデジタルも同じ
MZ:Instagramで4万人以上のフォロワーを持つCHIROさんをはじめ、多くのPBPが活躍されていますが、取り組みを進めるうえで直面した課題や苦労したことはありましたか。
河原:当然ながら、一朝一夕ではフォロワー数もお客様との信頼関係も築けません。取り組みを始めたばかりの頃はフォロワーが1日に1人も増えない日もあるなど、「このままでは1,000フォロワーに到達するのに何年かかるんだろう?」と悩みました。そこですぐに会社として効果がないからやめると判断してしまうのではなく、あらかじめ長期的な視点を持って取り組めるかがポイントの一つだと思います。
また、PBPのメンバーたちは「どんな投稿をしたらフォロワーさんに喜んでいただけるだろう」と常に考えています。どういうやり取りをすれば信頼しフォローしてくださるのか、自分の投稿はどのようなお客様・フォロワーさんに見ていただいているのか。最初は模索しつつも、取り組みを続けていると、お客様のことが徐々にわかってきます。スタッフがお客様と信頼関係を築いていくプロセスは、店頭でもデジタルでも変わらないと感じます。
CHIRO:店頭での接客では、同じ商品でもお客様によって提案方法が変わりますよね。SNSでも同様に、お客様が求めている情報の種類や、お客様自身への美容に対する知識・レベル感などで発信の仕方は変わってきます。その感覚をつかむまでが大変でした。各投稿への反応を観察し、良い反応があったらユーザーを分析することを繰り返しました。
その結果、私の場合は30代でお子さんがいる方からの反応が多いことがわかってきました。そこで毎日忙しくてスキンケアに時間をかけられないから、コンセプトは「時短・簡単」のように、発信の軸を作っていきました。最初は写真をきれいに撮ることに躍起になっていましたが、お客様と向き合い続けることで求められているのはそこではないと気づきましたね。

最前線で顧客と向き合うPBPが主体に
MZ:取り組みの戦略や方針についてもお教えください。
河原:最低限のガイドラインを置いたうえで、発信内容などの細かい制限は設けずPBPそれぞれの個性を重視する方針です。肌属性やパーソナルカラー、得意分野も各PBPの個性の一つとして、お客様の参考にしていただければと思っています。

河原:PBPチーム内では「この投稿はお客様にとって良いものか」「資生堂のPBPとしてふさわしい投稿なのだろうか」と議論が行われています。戦略側の目線からすると、資生堂らしさにこだわってつい守りに入りがちです。しかし、日々最前線でお客様と向き合うPBPの目線で、ブランドとして守るべきこととお客様や時代に合わせて変えるべきことを判断していくことが大切だと考えています。
CHIRO:いち個人として個性を出す発信と資生堂の一員としての発信のバランスはなかなか難しいところですが、お客様目線で考えながら出し分けをしています。たとえばフォローしてくださった方が見るInstagramのストーリーズは、少しプライベート感を出した内容にすることで「身近で参考にできそう」と親近感を持っていただけるよう意識しています。