圧倒的なシェアのポイントカードをデジタル地域通貨に
江差EZOCAは93%の町民が保有し、次に導入した小清水町でも「小清水EZOCA」を87%の住民が保有している。小清水町は人口約4,400人でサツドラの店舗はないが、新しく建った庁舎の敷地内にサツドラをオープンする予定だ。通常ドラッグストアは成り立たない商圏人口ではあるものの、こうして自治体と提携することで店舗を持続可能にしようとしている。
「自治体とこれだけ提携していると『一つの民間企業に肩入れするのはどうなのか』という話になるかもしれません。しかし、実際にここまで人口が減少していることで自治体や地元商店の方々も非常に危機感を持たれており、我々と一緒に地域課題の解決に取り組んでいくことに合意していただけました。こうした事例ができたことで、他の自治体からも次々とお声がかかっています」(富山氏)
スポーツチームや地域と提携した還元型EZOCAは、利用者平均で来店回数が120.1%、売上が113.9%になるという成果を出している。利用者が使う意味を理解し貢献していることが、還元型EZOCAの特長だといえる。

さらに同社では、道内の企業と一般社団法人QUALITY HOKKAIDOを設立し、北海道でのデジタル地域通貨を作るプロジェクトもスタートした。地銀やスポーツチーム、電力会社、宇宙産業、百貨店、メディアなど、様々なステークホルダーが参加している。
「EZOCAはポイントカードですが、現在はキャッシュレス決済といった金融のデジタル化についても規制が緩和されてきているため、これを基盤としたデジタル地域通貨の発行も非常に実現性が高いと思っています」(富山氏)

トラフィックを活かしたビジネスモデルの拡張
サツドラホールディングスのビジネスモデルを思考する際に、富山氏はAmazon創業者のジェフ・ベゾス氏が創業時に書いたと言われる図に着目したという。
Amazonはオンラインでの本の販売からスタートし、サブスクリプションサービスのAmazonプライム、既存のECカートシステムやトラフィックをプラットフォームとして活用したマーケットプレイス、Amazonが自社のバックオフィス的な機能として使っていたソリューション「AWS」の法人サービス化といったようにビジネスを拡大して成長していった。こうしたすべてのグロースの源泉は、トラフィックにある。
これに習い、サツドラホールティングスのビジネスもリテールのトラフィックを源泉として成長してきた。
EZOCAで多くの会員数を獲得できたのは、リテールのトラフィックがあったからだ。最初はサツドラのみのポイントカードとして誕生し、基盤となる会員数を獲得。そこからEZOCAの事業を行うリージョナルマーケティングという会社を設立し、さらに広げていった。たとえばQR決済のゲートウェイ事業もやっていて、現在約1万5,000ヵ所で導入されている。これもトラフィックを利用して、サツドラでの事例をもとに機能開発をして各社に広げていくことで、プラットフォームになっていった。そして、リテールの場にデータがあったため、バックオフィスやソリューション開発を行い、それをソリューションとして提供できた。サブスクリプションはまだ確立していないが、リテールのトラフィックを利用すればサービスを広げやすいと考えているという。

またグループ内ではCVCを立ち上げ、スタートアップの支援にも積極的だ。自社のリテールや、つながりのある自治体とともにプロジェクトのPoCができ、モデルづくりやバリューアップがしやすい。
「地域コネクティッドビジネスは、リテールの拡大解釈ともいえます。北海道というある程度の生活圏に区切ったとき、そのマーケットの中でそれまでとは違ったものが作れるのではないかと考え、取り組んできました。今後も北海道モデルやリテールのDXを活用して、新たなモデルケースを創っていきたいと思っています」(富山氏)