広告メニューの新たな活用方法に取り組んだ楽天とCriteo
──今回は、楽天さんのディスプレイ広告における先進事例についてお伺いします。まず、自己紹介をお願いできますか。
住谷:私は、楽天市場マーケティング部でグループマネージャーを担っています。主に広告を用いて外部から集客を行い、売上を最大化することがグループのミッションです。そのためCriteoさんをはじめとする複数の広告会社やメディアと施策を行っています。
天滿:楽天市場マーケティング部の主に広告を担うセクションは主にリスティング広告のチームとディスプレイ広告のチームの2つに分かれているのですが、私は両方に所属して運用や分析、そこからの施策立案を担当しています。
木村:私はディスプレイ広告専門のチームに所属していまして、主に開発案件や効果測定、レポーティングなどのサポートをすることでディスプレイの媒体を横串で管理しています。
松尾:Criteoで、マーケットプレイス、リテーラー、ブランドといった広告主様に対してCriteoのソリューションを導入いただいた後の運用サポートおよびアップセル・クロスセルを行っているチームのマネージャーをしております。
小川:私はアカウントストラテジストとして、リテール・マーケットプレイス系のクライアント様を中心にパフォーマンス改善、分析やR&Dとの連携などを担っています。
楽天市場のマーケティング戦略
──楽天市場では、昨今のデジタルマーケティングの状況を踏まえてどのような戦略を立てているのでしょうか。
住谷:Cookieや個人情報の規制が厳しくなり、リターゲティングすることが難しく、確度の高いユーザーにリーチできる機会が減ってしまうことが課題でした。よって、そのような状況下でどのようにリーチを増やすかが命題となっています。
住谷:従来は購入意向の高いローワーファネルに重きを置いてきましたが、昨今は新規ユーザーの取り込みを目的とした見込み顧客への配信拡大にも注力しています。Cookieレスになっていくからこそ、アッパーに踏み込んでいかに見込み顧客を育成するかが、ビジネスを拡大させていく上で重要だと思っています。
──フルファネル戦略をとる上で重視していることはありますか。
住谷:ローワーファネルは購入意思が40%以上あるユーザーで、アッパーファネルは購入意思が40%未満のユーザーとした時に、CVRやROIを比較すると当然パフォーマンスは違ってきます。
そのため、ローワーファネルユーザーとアッパーファネルユーザーにおけるパフォーマンス差分を理解した上で統合して評価することが重要なポイントだと考えています。
──アッパーファネルへ向けた、デジタル戦略について伺えますか。
住谷:ターゲティングの解像度をより上げていくことがまず大事です。そのためには、購入されないユーザーはどういう人なのか、定性的・定量的な調査・理解をしなければいけません。その理解がないと、どういうクリエイティブやコミュニケーションが成立するかわからないからです。
その上で、必要なコミュニケーション量や予算といったデジタルのプランニングを立てています。
楽天とCriteoが行った、Cookie規制強化も視野に入れた新規・休眠ユーザー獲得施策がわかる!
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コンバージョンに貪欲なCriteo広告
──楽天さんではCriteoさんを長く使われているそうですが、他の媒体と比べてどのような特長がありますか。
天滿:Criteoさんの広告は弊社で10年以上使っています。特長は2つありまして、1つは他のプラットフォームやDSPと比較すると、SSPが圧倒的に優れているところです。他にはない在庫量とカバレッジの高さにより、Criteoさんでしかとれないユーザーがいます。
もう1つは、コンバージョンに対し貪欲なエンジンであることです。ターゲティングの精度が素晴らしいので、運用型広告の中でも多くの予算をCriteoさんに投下していました。元々ローワーファネルに重きを置いていたこともあり、ダイナミック広告をどんどん回して活用してきました。
──Cookieレス化に向けて、Criteoさんに求めることは、どのように変化しましたか。
天滿:従来は、ほぼ100%Cookieに依存して成果を上げてきましたが、2〜3年ほど前からCookieを使ったリターゲティング以外の方法でターゲティングをしていかなくてはいけないという課題感を持っていました。弊社ではリターゲティング以外の領域を「プロスペクティング」と呼んでいますが、そこをなんとかしていきたいとCriteoさんに相談しました。
確度の高いユーザーにリーチさせる!広告配信開発の道のり
──Criteoさんは、楽天さんのリクエストにどう応えていきましたか。
小川:2022年末に楽天さんと、フランス本社のメンバーも含めた弊社とでディスカッションした結果、新規ユーザーに向けた広告配信を行うCCA(Criteo Customer Acquisition)導入にチャレンジするアクションアイテムが生まれました。
CCAは、まだ楽天市場を訪れたことのない新規ユーザー群のうち、楽天市場に訪れたことのある既存ユーザーに類似した、購買確度の高いユーザーに対して配信を行う類似オーディエンスのプロダクトです。つまりアッパーファネルの中でも、購買意欲の高い見込みユーザーに配信していきます。さらに現在は、類似ユーザー以外にコンテクスチュアルユーザーという、Cookieレスのユーザーも含んでいます。
小川:そして楽天様と何度も協議を重ねていく中で、弊社のプロダクト担当者から「Golden Setupと組み合わせてはどうか?」というアイデアが出てきました。
──Golden Setupとはどういったものなのでしょうか。
小川:CCAでは本来、新規ユーザーだけをターゲットとしているのですが、Golden Setupは既存ユーザーもオーディエンスに含めることでより楽天市場の利用ユーザーの行動特性に沿ったラーニングを行い、類推精度を高めるものです。
これらを組み合わせることで、購入確度の高い新規ユーザーに対して配信することが可能となりました。2023年の2月頃からCCAとGolden Setupを組み合わせた検証をスタートしましたが、開始すぐから高いパフォーマンスが出ています。
楽天市場様では、数年前にCCAがローンチされた後すぐに実施済みの施策となっており、当時はパフォーマンスが見合わず配信を停止した経緯がありました。今回は設計を変更しての再チャレンジという形でしたが、これまでパフォーマンス改善以外の様々な観点でも議論を重ねてきたことで、過去停止した施策の再検討ができた点は良かったと考えています。
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常識を疑い、パフォーマンスの出る広告配信へ進化
──Golden Setupと組み合わせるという解決策には、どのようにたどり着いたのでしょうか。
松尾:実は弊社では元々、ユーザーを重複させて配信することを推奨していませんでした。また、他の広告主様や代理店様からもキャンペーン間での配信ユーザーの重複を避けるご要望をいただくことが多く、大半が重複させない配信設計となっていました。「でも、それって本当にいけないことなの?」というところから議論が始まり、検証をした結果、たどり着きました。
Criteoのエンジンはご設定いただいたCPC、CPA、ROASといった目標値を達成するために配信対象ユーザーの優先度を決めて配信を行うため、一定数リーチできなかったユーザーが発生してしまいます。せっかくサイトに訪問していただいたにも関わらず何らかの理由で購入せずに離脱してしまったユーザーに広告配信ができていないのはもったいないですよね。Golden Setupによってリターゲティングでリーチできなかった既存ユーザーに対するリーチを補完できるだけでなく、サイト訪問時に閲覧した商品と関連性のある別の商品をユーザーに推奨できます。
また、エンジンの学習の観点からパフォーマンスを上げるためにはエンジンにインプットするためのデータ量が重要になってきます。既存ユーザーのデータも混ぜることによって、結果としてエンジンによる学習が加速しパフォーマンスの向上につながりました。
──CCAを提案された時、楽天さんの期待感はどのようなものでしたか。
木村:元々は、Cookieレスによって失われたユーザーを補完できればという程度の期待感でした。正直そこまで期待値が高かったわけではありませんでした。
住谷:Golden Setupと組み合わせて効果を上げるまでの道のりは、そんなに簡単ではなかったのではないかと思います。CRITEOのみなさんには我々のニーズに応えるために付き合ってくださったことに、感謝しています。
ROIを維持しながら、配信規模を拡大
──どのような成果が出ていますか。
天滿:我々が重きを置いていた、新規ユーザーや休眠ユーザーが多く獲得できた点が、非常に良かったです。予想外でしたね。新規ユーザーを獲得できたことによって、高いROIを出せたのも評価している点です。そのため、元々リターゲティングに使っていた予算のうち、かなりの部分をCCA・Golden Setupに投下するようになりました。
木村:良い意味で裏切られました。他の媒体でもプロスペクティング配信で新規ユーザーを獲得できるものはあるのですが、そこを強化していくと、どうしても飽和して新規の取れ高が鈍化したりROIが下がったりするポイントが出てきます。
しかしCCA・Golden Setupでは、非常に高い新規ユーザー獲得率を、ROIを維持しながらスケールできました。これは非常に大きなポイントです。また、弊社独自のコンバージョンで、CCA・Golden Setupで獲得した新規ユーザーはLTVが高いという結果も出ています。従来のリーチ配信・ターゲティング配信のいいとこ取りができている感覚がありますね。
──最後に、今後の展望についてお話しください。
天滿:リターゲティングは、引き続き改善をしつつ、プロスペクティングの領域にも注力していかないといけないと考えています。色々な方法でユーザーの深いインサイトを推測して広告配信の可能性を広げていくようにしたいと思っています。
また楽天市場としては、新規ユーザーを顧客へと育てるにあたり、態度変容を促さなければなりません。ナーチャリングの領域でも、磨いていきたいと思っています。
我々は、既存の広告プロダクトは他社も含め使い倒したという自信があります。弊社の規模や開発力を活かしつつ、Criteoさんという大きな会社さんと一緒にタッグを組むことで、今後も最先端のプロダクトを開発することにトライしていきたいです。
松尾:楽天様でご実施いただいているプロスペクティング配信の状況としては、まだ全体最適のフェーズだと思っています。次は、解像度を上げて入札や最適化を行い、より新規ユーザー獲得の成果を拡大していきたいです。
また弊社としては、2024年からCookie規制が実施され、今までご提供してきたパフォーマンスを担保できるかというチャレンジの時になります。取得できるデータも断片化していくので、そこをCriteoの技術でつなぎ合わせてユーザーの解像度を上げたソリューションを提供していけたらと考えています。
楽天とCriteoが行った、Cookie規制強化も視野に入れた新規・休眠ユーザー獲得施策がわかる!
今回の記事でも紹介された、日本最大級のECサイト「楽天市場」のCookieレス時代に向けた広告運用事例やその考え方に関する資料を無料で配布中!記事では掲載されていない内容や思わぬ成果も盛り込んでいますので、「より詳しい事例が知りたい」「Golden Setupに興味が出てきた」方はぜひ以下のリンクよりご覧ください!