有楽製菓の考えるSDGs戦略
──今回は有楽製菓さんのSDGsアクションに関する取り組みについて伺います。はじめに、有楽製菓さんではSDGsをどのように捉え、推進されているのでしょうか。
牧:当社は経営理念として「夢のある安くておいしいお菓子を創造する企業を目指します」と掲げています。なので当社がSDGsを推進する一番の目的は、未来ある子どもたちの笑顔を守ることです。その目標に向かって、児童労働問題への取り組みなどの活動を行っています。
──2019年から、商品に使用するカカオを児童労働に頼らない「スマイルカカオプロジェクト」が始動したと伺っています。同プロジェクトが始動した背景を伺えますか。
牧:元々は会長の河合伴治が児童兵に関する講演を聴き、衝撃を受けたのがきっかけです。そこでチョコレート業界でも「児童労働」という問題があると知りました。カカオ農家では、子どもたちが家庭の手伝いのような形ではなく、過酷な「労働」として働いている実態がある。チョコレートを扱う会社として何ができるのか考えるきっかけでした。
ブラックサンダーをきっかけに児童労働問題を見る
──SDGsをテーマにリサーチされている足立さんにお伺いします。児童労働問題に関して、生活者はどの程度問題意識を持っているのでしょうか。
足立:「フェアトレード」というワードが話題量トップになったのは2012~13年頃です。当時、教科書や学校教育においてフェアトレードが扱われたり、フェアトレードに参画する企業が増えたり、またドキュメンタリー映画が出たりと、話題性が一気に高まりました。ただ、当時の話者は専門家や経営者だったんですね。
現在は、全体の話題量は少なくなったものの、話者が「生活者」に移り変わっている点がポイントだと思います。身近な商品も徐々にフェアトレードに変わっていくことで、生活者にとっても意識しやすくなり、あえて話題には出さないのかもしれません。
──そうした中、有楽製菓さんの「スマイルカカオプロジェクト」の狙いはどういったところにあるのでしょうか。
牧:ブラックサンダーは、すでに児童労働に配慮された原料に全て切り替わっています。しかし、当社が利用するカカオ原料の量は業界全体から見ると非常に小さい。なので「あのブラックサンダーが児童労働問題に取り組んでいる」というニュースを発信することで、まずは生活者の方に知っていただくことが重要だと考えています。
結果的に、他の多くの企業が「この活動をしなければ」というムーブメントに変わっていくことが狙いです。当社だけでは農家の少年少女の労働をなくすことはできません。多くの企業がこの問題に真摯に向き合うことを、一つの目標にして活動を実施しています。
──強いブランドをもって、業界に問題提起をしていくということですね。
牧:そうですね。ブラックサンダーはありがたいことに、販売個数ナンバーワンというブランドパワーがあります。ブラックサンダーが児童労働問題に取り組んでいることを、他社さんに感じていただくことで、一緒にこの問題を解決していくきっかけになれたらと考えています。