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MarkeZine Day 2026 Spring

ソーシャルリスニングから見るSDGs最前線

ブラックサンダーに学ぶ、エシカル消費へつなげるSDGsアクションとは

カカオ農園に還元される「スマイルカカオプロジェクト」の仕組み

──「スマイルカカオプロジェクト」の、具体的な取り組みを教えてください。

牧:「スマイルカカオプロジェクト」は、当社がカカオ原料を購入する金額の中に「プレミアム」という支援金を上乗せし、それがカカオ農園に還元される仕組みになっています。プレミアムは、児童労働が起こらないように監視するシステムや環境問題への対策に使われるなど、使い道は様々です。

 たとえば、カカオだけで収入が賄いきれない農家では、自分たちで食べる用の作物を作っています。そうした副産物の栽培支援にもプレミアムが当てられます。単に金額を上乗せするだけでなく教育的な側面もあるので、農家の収入が安定して、結果的に子どもが働かなくても学校に行けるような仕組みになっているわけです。

──取り組みの中で、大変だった点はありますか。

牧:「ブラックサンダー」というメインブランドで原料を切り替えるわけですから、その味わいが落ちてはいけないと考えていました。なので、児童労働のない原材料に切り替える際、チョコレートの試作を60回近く行いました。その上でブラックサンダーに設計して、社内で合意をとりました。開発担当からは、そのプロセスに非常に気を遣ったと聞いています。

──いきなりメインブランドであるブラックサンダーで挑戦された理由を教えてください。

牧:メインブランドだからこその影響力が、このプロジェクトでは重要だったと考えたからです。

 当初は専用商材、たとえば「SDGsサンダー」のような商品を作る案もありましたが、それだと業界に対するインパクトがない。追随して「この活動を当社でもやっていきたい」と想いがつながっていくムーブメントが起こせないのではと考え、ブラックサンダーのシリーズを全部切り替えていく決断をしました。

安くて手軽にSDGs!?意外性から話題に

──プロジェクトを通してどのような成果・効果が得られたのでしょうか。

牧:2022年9月に、ブラックサンダーが使用するカカオ原料が100%児童労働に配慮したものに切り替わったことを記者会見の場で発表しました。その際にかなり多くのメディアで取り上げていただきました。2022年8月~2023年7月までの1年間で、ブラックサンダーブランドに次いで、2番目に多く取り上げられるトピックスとなりました。

牧:当初は30円のまま値上げせずにこの活動を実施していました(現在は35円)。なのでブラックサンダーという安くて手軽なお菓子が、SDGsの活動を行っている意外性に注目して、取材いただくことが多かったです。

 加えて、X(旧Twitter)で、当社ではないとあるアカウントが「ブラックサンダーは児童労働に配慮した原料を使っている」と投稿をしたことが話題になりました。結果、コメントが150件ほどついておりました。我々としては児童労働問題があることを、まず知っていただくことが一つの目標でしたので、その面では大きな成果だったのではと考えています。

──パッケージなどには、同活動について表記していたのですか?

牧:全く載せていませんでした。表記していたのはスマイルカカオプロジェクトのロゴマークのみで、記者会見のタイミングでようやく詳細をお披露目した形でした。

 そのタイミングで生活者の方からも「どんな活動をしているのですか」と、お問い合わせをいただくようになって。それをきっかけに、最近スマイルカカオプロジェクトのWebページもリニューアルし、支援の仕組みをより分かりやすく図式化して、お客様に知っていただく活動にも注力しています。

──キャンペーンを実施してから、新たな気づきや課題はありましたか。

牧:スマイルカカオプロジェクトに関して、小・中学校、高校から「授業をしてほしい」と、お声がけが増えて2023年も数件実施しました。

 学校教育でSDGsが取り上げられるようになっている今、若い方の興味関心は大人よりも高いように感じています。今後、子どもからの影響で大人がエシカルフードを選ぶ構図もあり得るかもしれません。また、今の子どもたちが大人になり、自分で稼いで商品を購入する頃には、社会問題に向き合っている商品を選ぶことがより増えていくと思います。いわゆるアルファ世代は、社会貢献している商品しか選ばないといったムーブメントも出てきそうですよね。

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エシカル消費をスタンダードにするために

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/04 08:00 https://markezine.jp/article/detail/44168

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