信じるべきは、サービスを愛するユーザーの声
飯髙:ユーザーの意見をプロダクトやサービスに反映する場合の基準はありますか?
服部:「熱量の高い方が言っていることは基本信じる」というスタンスです。LP経由でsnaq.meのサブスクに申し込む際には、好みや除外したい食材を選択する「おやつ診断」を必ず受けてもらうようにしています。マーケやLPの専門家から「導線が長いからやめた方がいい」とアドバイスを受け、一度やめたことがあるのですが、おやつ診断をやめたらCVRが下がったんです。
そこにはタネがあって、マーケターはお菓子に興味がないので診断が苦になるんですが、snaq.meを始める人はそもそもおやつが好きで、自分向けにカスタマイズをするための診断なので楽しめる。専門家とユーザーやユーザー候補との間には視点に大きなギャップがあるわけです。以来、ユーザーやターゲットではない人の声は気にしないようになりました。


飯髙:私もサービスまわりの施策をしていると様々なお言葉をいただきます。やはり、きちんと使ってくれている人の意見は、より使いやすくするためのものなので、取り入れようと思いますよね。ちなみに、これまで何人ぐらいユーザーさんと会ったのですか?
服部:以前は週1でインタビューしていました。迷った時は集中的に10人くらいとお話しする時もあります。また、スタッフとして実店舗で接客することもありますね。
体験重視の理由は「ユーザーが楽しそう」だったから
飯髙:ビジネスを成長させる中で苦しかったときはありましたか?
服部:つらかったのはsnaq.meの前段階ですね。私自身はコンサル出身で、2015年9月の創業からsnaq.meを始める2016年3月までの間、実は様々な事業を作っては失敗してを繰り返していました。市場調査をして「自分は別に使わないけど、こういうニーズがある」という仮説を元に、冷凍弁当の通販やプロテインなどの事業を立ち上げていました。でも、不思議とどれもうまくいかなかった。
飯髙:マーケットを見て「あったらいいよね」と立ち上げた事業はうまくいかなくて、「自分が欲しい」ものはうまくいくのはとても本質的ですね。

服部:そうですね。snaq.meを始めてからは、ニーズを拾って広げてサービスを磨くことをひたすら続けてきました。もちろんsnaq.meを続けてきた中でも苦しい時はありました。たとえば、多くの社員が辞めてしまう時期があって、それは方向性に迷いが生まれていたタイミングと重なります。商品に特化して「ナチュラルなお菓子」というプロダクトを押し出すか、それとも「おやつ体験」を重視するのか決めきれず、迷走していました。
飯髙:その際は、どんな意思決定をしたんですか?
服部:ユーザーの声を重視しました。「お菓子そのものとおやつ体験、どちらにより価値を感じていただいているか?」について、集中的にお客様インタビューを行ってみたんです。すると、体験を求める方々は本当に楽しそうに話してくれて。「自分へのプレゼントみたいで、snaq.meが届くと毎回わくわくするんです」といった声を聞いて、ここを突き抜けたほうがいいと判断して体験へ舵を切りました。
飯髙:商品力で戦うと、近くにお店ができたらそちらの商品に移ってしまう可能性もありますから、素晴らしい判断だと思います。とはいえ、重要な局面でもお客さんの声を基準にするのはすごいですね。熱意のある人の声はある意味で偏りもあると思います。そこを聞き入れるのは勇気がいりませんか?
服部:実際、偏っていると思います。そこを自覚しながら声を採用して、先々を考えるイメージですね。意思決定の材料は8割がお客様の声、2割が調査やビジネス的な観点です。それにお客様の声は、商品開発にも非常に役立っています。
季節によって変動もありますが、累計200社以上のメーカーと、これまで2000商品ほどお菓子を開発してきました。お客様にはおやつボックスが届くと、評価をつけてもらうのですが、内容はすべてメーカーさんと共有しています。「この前のやつ、何点でしたか?」と確認されるメーカーの方もいて、次の商品開発にもつながっていると感じます。
お客様は次に届くボックスをより自分好みの内容にするために評価をするので、嘘やお世辞が無いんですよね。
飯髙:ユーザーが真剣に評価を書くことで、造り手が声を受け止めて、次回も美味しくて新しいおやつが届く。良い体験の循環ができているんですね。