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MarkeZine Day 2025 Retail

飯髙悠太氏が探る「エモ」と「ビジネス」と「成長」

熱量の高いユーザーが言っていることを信じる、おやつ体験メーカーを目指すスナックミーの経営戦略

信じるべきは、サービスを愛するユーザーの声

飯髙:ユーザーの意見をプロダクトやサービスに反映する場合の基準はありますか?

服部:「熱量の高い方が言っていることは基本信じる」というスタンスです。LP経由でsnaq.meのサブスクに申し込む際には、好みや除外したい食材を選択する「おやつ診断」を必ず受けてもらうようにしています。マーケやLPの専門家から「導線が長いからやめた方がいい」とアドバイスを受け、一度やめたことがあるのですが、おやつ診断をやめたらCVRが下がったんです。

 そこにはタネがあって、マーケターはお菓子に興味がないので診断が苦になるんですが、snaq.meを始める人はそもそもおやつが好きで、自分向けにカスタマイズをするための診断なので楽しめる。専門家とユーザーやユーザー候補との間には視点に大きなギャップがあるわけです。以来、ユーザーやターゲットではない人の声は気にしないようになりました。

スナックミーの工場の写真です
ユーザーの好みに合わせたお菓子を工場でスタッフがセレクト、箱詰めしている
ユーザーの好みに合わせたお菓子を工場でスタッフがセレクト、箱詰めしている

飯髙:私もサービスまわりの施策をしていると様々なお言葉をいただきます。やはり、きちんと使ってくれている人の意見は、より使いやすくするためのものなので、取り入れようと思いますよね。ちなみに、これまで何人ぐらいユーザーさんと会ったのですか?

服部:以前は週1でインタビューしていました。迷った時は集中的に10人くらいとお話しする時もあります。また、スタッフとして実店舗で接客することもありますね。

体験重視の理由は「ユーザーが楽しそう」だったから

飯髙:ビジネスを成長させる中で苦しかったときはありましたか?

服部:つらかったのはsnaq.meの前段階ですね。私自身はコンサル出身で、2015年9月の創業からsnaq.meを始める2016年3月までの間、実は様々な事業を作っては失敗してを繰り返していました。市場調査をして「自分は別に使わないけど、こういうニーズがある」という仮説を元に、冷凍弁当の通販やプロテインなどの事業を立ち上げていました。でも、不思議とどれもうまくいかなかった。

飯髙:マーケットを見て「あったらいいよね」と立ち上げた事業はうまくいかなくて、「自分が欲しい」ものはうまくいくのはとても本質的ですね。

株式会社GiftX 代表 飯髙悠太氏
株式会社GiftX 代表 飯髙悠太氏

服部:そうですね。snaq.meを始めてからは、ニーズを拾って広げてサービスを磨くことをひたすら続けてきました。もちろんsnaq.meを続けてきた中でも苦しい時はありました。たとえば、多くの社員が辞めてしまう時期があって、それは方向性に迷いが生まれていたタイミングと重なります。商品に特化して「ナチュラルなお菓子」というプロダクトを押し出すか、それとも「おやつ体験」を重視するのか決めきれず、迷走していました。

飯髙:その際は、どんな意思決定をしたんですか?

服部:ユーザーの声を重視しました。「お菓子そのものとおやつ体験、どちらにより価値を感じていただいているか?」について、集中的にお客様インタビューを行ってみたんです。すると、体験を求める方々は本当に楽しそうに話してくれて。「自分へのプレゼントみたいで、snaq.meが届くと毎回わくわくするんです」といった声を聞いて、ここを突き抜けたほうがいいと判断して体験へ舵を切りました。

飯髙:商品力で戦うと、近くにお店ができたらそちらの商品に移ってしまう可能性もありますから、素晴らしい判断だと思います。とはいえ、重要な局面でもお客さんの声を基準にするのはすごいですね。熱意のある人の声はある意味で偏りもあると思います。そこを聞き入れるのは勇気がいりませんか?

服部:実際、偏っていると思います。そこを自覚しながら声を採用して、先々を考えるイメージですね。意思決定の材料は8割がお客様の声、2割が調査やビジネス的な観点です。それにお客様の声は、商品開発にも非常に役立っています。

 季節によって変動もありますが、累計200社以上のメーカーと、これまで2000商品ほどお菓子を開発してきました。お客様にはおやつボックスが届くと、評価をつけてもらうのですが、内容はすべてメーカーさんと共有しています。「この前のやつ、何点でしたか?」と確認されるメーカーの方もいて、次の商品開発にもつながっていると感じます。

 お客様は次に届くボックスをより自分好みの内容にするために評価をするので、嘘やお世辞が無いんですよね。

飯髙:ユーザーが真剣に評価を書くことで、造り手が声を受け止めて、次回も美味しくて新しいおやつが届く。良い体験の循環ができているんですね。

次のページ
最後は、サービス提供側の熱意

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この記事の著者

飯髙 悠太(イイタカ ユウタ)

株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。現在、企業のアドバイザーやマーケテ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/04/25 08:49 https://markezine.jp/article/detail/44251

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