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有園が訊く!

生成AIは教育を変えるか デジタル化の先に「変革できる人材」育成への道筋

デジタル化が実現する教育のD&Iとは?

有園:配布した端末を学びの向上につなげる取り組みが必要だというお話がありましたが、そのためには学校の先生のリスキリングも必要になるのでは。前回の対談では、ティーチングだけでなく、コーチングの役割も担う必要が出てくるというお話がありました。

吉田:デジタル化によってティーチングが不要になるわけではありません。しかし、様々な進度の生徒を見ながら手助けするのは、黒板の前に立って教えることとはやり方が違います。コーチングやPCのスキルも必要になってくると思います。

 ただ、先生たちはこれまでコーチングをやってこなかったわけではありません。様々な場面で、特に意識することなく生徒をフォローしてきたと思います。

有園:私もティーチングとコーチングの二元論ではないと思っています。教師でなくても、社会に出ればティーチングとコーチングの両方が必要な場面があります。ただ、ツールが変化しているので、まずはPCが使えないとやりづらくなります。その意味でリスキリングも必要ですね。

吉田:民間企業の人たちがもっと教育現場に入れるようにすることも重要だと思います。

有園:話は変わりますが、企業では頻繁に聞かれるようになった「ダイバーシティ&インクルージョン」についてもお話を聞きたいです。

吉田:デジタル領域に関して言えば、教室に来られない生徒にも教育機会を提供できます。デジタルで可能になる包摂の一つではないかと思います。

有園:理由があって教室に通うことができない状況だったとしても、授業を受けたり、クラスメートと話したりすることもできますね。

吉田:もちろん教室が中心ではありますが、それだけにとどまらない教育を提供できます。

AIの世界で“変革”できる人材の育成を

有園:最後に、AI時代に対応できる能力を持つ人材の定義と、そのような人材を育成する道筋について、どのように考えていますか。

吉田:デジタル化の議論では、業務をデジタル化する「デジタイゼーション」と、デジタルによる業務変革によって生産性を上げる「デジタライゼーション」がよく語られます。AIも同じです。作業をAIで置き換えるだけではなく、どれだけ変革できるかを考えられる人材が求められていくと思います。

 デジタル行財政改革会議で有識者が話していましたが、これからの人口減少社会はサービスの提供側においても例外ではなく、「フロント側で利用者に応対する人」が減少する中で、「バックオフィスで支えるAI」のセットで提供していくことが考えられます。フロント側の人間はバックにいるAIにわからないことを聞き、その現場の情報によってさらにAIが学習する。そんな循環ができればいいというお話でした。

 それをAIに最適な形で実現するためには、これまでの縦割りの制度設計ではなく、フロントサービスの業務を類型化して再構築し、制度に横串を刺すような発想が必要です。従来の業務の区分や制度にとらわれず、AIを前提とした世界で新たに業務を構築できる人たちが育っていけば、世の中は変わっていくのではないでしょうか。

有園:私はIT業界に約30年いますが、振り返ると、たびたび「生産性を上げる」ことについて突き詰めて議論してきました。生産性を上げるということは、1人当たりのGDPを上げること。つまり、労働力の価値が上がるということです。また、「より豊かな生活をする」ことは、「より人間の価値を高める」ことです。

 今日お話ししてきたことはすべて、人間の価値、つまり“あなた”の価値を高めたい、そして幸せになってほしい、という思いにつながるのです。まだ課題はたくさんありますが、そのために取り組んでいるのだと思います。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2023/12/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/44368

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