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第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

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有園が訊く!

生成AIは教育を変えるか デジタル化の先に「変革できる人材」育成への道筋

 生成AIをはじめとするテクノロジーの進化は、教育現場にも変化をもたらしている。政府が推し進めた「GIGAスクール構想」によって、児童・生徒向けの端末やネットワーク環境は整備された。今後、デジタルを教育に活用する取り組みはどう進んでいくのか。Microsoft Advertisingの事業責任者を務める有園雄一氏が、内閣官房 デジタル行財政改革会議事務局次長の吉田宏平氏と対談。AI時代の教育の在り方や、日本の将来につながる人材育成について議論した。

学校にPCは普及したものの、学びのDXはこれから

有園:私個人としては、国にとっての「教育」は、企業のマーケティングやブランディングにも通じると考えています。どのような国にしたいか、どのような分野で競争力を高めたいかという理想によって、教育の在り方が決まるからです。

 吉田さんとは2020年にエドテックをテーマに対談しました。そのとき、これからはAI教育が重要になるというお話がありました。そして現在、2022年11月に公開された「ChatGPT」をはじめとする生成AIがブームとなっています。

 また、文部科学省が2019年12月に打ち出した「GIGAスクール構想」の取り組みも加速しました。まずはその現状について教えてください。

吉田:前回もお話ししましたが、2018年までのOECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査(PISA)で、日本は学校の授業におけるICT活用頻度が他のOECD加盟国と比べて極めて少ないという結果が出ていました(注1)。その状況を変えるために、義務教育で「1人1台端末」を進めることになりました。それがGIGAスクール構想です。

内閣官房 デジタル行財政改革会議事務局次長 吉田宏平氏
内閣官房 デジタル行財政改革会議事務局次長 吉田宏平氏

 その結果、現在では、端末の普及率は世界に冠たる水準になりました。しかし、その後どうなっているのかを検証する必要があります。デジタル行財政改革会議でも「諸外国でPCの普及率をKPIにしている学びのDXは失敗している」という発言がありました。PCの操作に慣れたり、SNSで発信したり、音楽やゲームを楽しんだりするだけでは学びにつながらず、デジタルを活用した学びの向上につなげていく取り組みが求められます。

 現状では、端末を使って共同で調査する作業までできているケースは少なく、調べ学習から発展して生徒自身が自らの興味のあることを学習するために使えているケースも少ないと思います。取り組みを改善していく必要があります。その中にAI活用も入ってくるでしょう。AIなどのツールを使い倒して、学びの向上につなげていくことが求められています。

(注1)2023年12月に公表された2022年PISA調査において、数学的リテラシー(1位/5位)、読解力(2位/3位)、科学的リテラシー(1位/2位)3分野全てにおいてトップレベルの結果になるとともに、高等学校での授業中のICT利活用についても大幅に改善された。情報の記録・分析・報告を超えた探求型の教育については引き続き課題が残っている。
※カッコ内の左側はOECD加盟国中、右側は全参加国・地域中における日本の順位。
出典:「PISA2022のポイント(PDF)

生成AIを教育にどのように取り入れるか

有園:生成AIについては、学校教育に取り入れることに対して様々な意見があります。デジタル、そしてAIの活用について、どのように捉えていますか。

吉田:座学を中心とした画一的な学びから、個別最適な学びへ移っていく。その変化は必ず起きます。そうすると、様々な学習進度の生徒に合わせた対応や教材が必要になります。そこに大きく関わるのがデジタルです。

 デジタル活用の一環として、学習指導要領をもとに単元別・項目別にコードを付与する取り組みを進めています。それによって個別の学習進度を可視化し、学習内容や教材を提案できるようにすることが理想です。そこまで実現するのはまだ時間がかかりますが、デジタルによって学習の形が変わることは間違いありません。

 その中でも生成AIはインパクトが大きいですね。学校現場でも有効活用できればいいと考えています。様々な懸念や制約はありますが、課題点を改善しながら柔軟に使える形になればいいと思います。

有園:AIを教育現場に取り入れることには前向きなんですね。

吉田:はい。児童・生徒の世代にとっては、将来的にAIを使うことが必須になると思います。それを学校以外の場で学べ、というのもおかしな話でしょう。導入する場面や使い方を考慮する必要はありますが、教育に取り入れていくべきだと思います。

有園:しかし、生成AIを使うことに対して批判的な見方をする人もいると思います。どのように対処できますか。

吉田:たとえば、読書感想文の課題を出すと、生成AIで簡単に作れてしまいます。それなら、これまでと少し違う作業を必要とする課題に変えるのはどうでしょうか。生成AIによるアシストを上手に活用し、より高度なものを作り上げることは認められるべきです。AIにアシストしてもらうことを前提として、その活用の際の工夫や活用結果をもとにした考察など、高度な課題設定をすればいいのではないかと思います。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2023/12/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/44368

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