人材のスキルを可視化する「レーダーチャート」の罠
第3回では、時代に合わせた新たなOJT 自走できるデジマ人材を育む三つのポイントについてお話してきました。
人材育成の現場では「必要なスキル」が個々に規定されているかと思います。しかしそれは、本人が規定したものではなく、会社の誰かが規定したものではないでしょうか。仮に直属の上長が規定してしまうと、必要なスキルは、理想論となってしまいがちです。現状の提供役務に必要なスキルに比べ、身に着けて欲しいスキルに多くを求めてしまうからです。今回は人材のスキルを可視化する際にありがちな問題点や、本当に必要なスキルを選択するために使うべき成熟度可視化の新たな方法、その活用方法を説明していきます。
先述の通り、多くの組織において上司は、直属の部下に大きな期待を寄せ、“背伸び”をさせてしまう傾向にあります。その上、理想的な人物像になるために必要なスキルを規定し、成長の度合いをレーダーチャートで可視化しようとします。
実際、スキルを視覚化するレーダーチャートは、自身の成果や成績、習得したスキルの変化を把握する上では非常に便利です。しかし、人材育成の場面では、このレーダーチャートに落とし穴があります。それは、「足りないスキル」を埋めることに意識が向いてしまうことです。
デジマ人材には、プランニング、データ解析、テクノロジーツール理解力などの「専門スキル」から、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、業務推進力などの「ビジネススキル」まで多岐にわたってスキルが必要になってしまいます。そんなデジマ組織において、メンバー全員のスキルをチャートで可視化すると当然ながら凸凹なものになります。本来、その凸凹さがチームにとっては良い影響を与えるものです。しかし、スキルをレーダーチャート化してしまうと、多くの上司は「バランス型の人材を育てなければ」という感情が湧いてしまい、その結果、メンバー個人が目指すべきスキル選択を見誤ってしまうのです。では、そうならないためにはどうすればよいのでしょうか。
星取表でチームメンバー全員のスキルを可視化
まず行うべきなのは、スキルのレーダーチャート化をやめ、新たな「視覚化指標を作ること」です。ここでお勧めするのは「星取表」です。星取表は基本的に、縦軸にメンバーの名前、横軸にスキルを記載し、各人のスキルの成熟度を3~5段階の評価で記入するものです。今回は、◎がマネージャークラス、〇がクライアントの前で十分な説明が可能、△が経験はあるがヘルプが必要、-が未経験という設定にしました。今後習得したい、成長させたい領域は、レベルの横に↑を付けて、色帯を引きます。こうしてできあがったのが図1です。
星取表のメリットは、チーム全員のスキルセットが一目かつ全員にわかることです。この星取表をチーム全体で必要となる提供価値を踏まえて活用すると、各メンバーがチームで業務を遂行する際に必要なスキルが見えてくるようになります。