エージェンシー・ランキングが見せていた、広告業界のダイナミクス
約160年の歴史を持つ広告会社「J.Walter Thompson」は、マーチン・ソレル氏がWPPとして1987年に買収した会社だ。ソレル氏が退任した後のマーク・リードCEOがWunderman社と合併組織にし、「Wunderman Thompson」という名前にしたことで「JWT」の名前を消していた。さらに、リードCEOはY&R(Young&Rubicam)もデジタルエージェンシーのVMLと引っ付けて「VMLY&R」とし、Y&Rの名前も消していた。
2023年10月、WPPはさらなる合わせ技により「Wunderman Thompson」と「VMLY&R」を合併することを発表。これは「Wunderman+J.Walter Thompson」と「VML+Y&R」の2社+2社の合わせ技であり、単純に名前を合わせれば「VMLY&RWUNDERMANTHOMPSON」と呪文のようになる。さすがに、この長い名前を捨てて「VML」社とするようだ。これにより、伝統あるJWT、Y&R、Wundermanという名称が広告業界から完全に消えることになる。
この例は、「広告」が起点にある企業がクライアントの広告取扱額をかき集めて「水平規模の経済(合わせ技)」「メディア・バルク売り」を常套手法とする価値観を具現化する例に見える。上記の社名のネーミングの背景も、ブランド・エキスパート企業が見せる姿とは思えない。コンサル系企業がサービスを一新させつつ、垂直に事業領域を融合させている様子と対照的だ。
もう1つ、これは筆者独自の気づきと推測だが、2022年度からホールディングスランキングに(すら)PwCの名前が見当たらなくなっている。前年2021年には世界7位に登場する兆円規模のビジネスが突然消えるはずもないので、「ランキング参加を辞退した」と考えられる。前述のとおりボランティア提出の集計であるため、これに関する正式発表はされていない。連動したようにWeb上の検索で「PwC Digital」や「PwC Interactive」も登場しないように最適化されており、PwCのサイト上でもマーケティングや広告のようなサービス名称(Capabilities)は登場しない。
エージェンシー単体ランキングが消え、ホールディングスがエージェンシーを束ねて消し、PwCが離脱し、といった「消えて見えなくなる」出来事の連続を俯瞰で見れば、「広告エージェンシーという概念の終焉」の表題も理解できよう(参考)。
