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有園が訊く!

生成AIは「真善美」を判断できるのか 村上憲郎氏が見据える、テクノロジーの進化で行き着く未来

量子コンピュータがAIの計算を支える

有園:AGIの実現に加えて、村上さんの専門である量子コンピュータの実用化についてもお聞きします。この2つはセットで動いていくのでしょうか。

村上:そうですね。生成AIの計算はコンピューティングパワーが支えています。既存のもの、例えばGPUでは間に合わなくなったとき、量子コンピュータの計算力が支えていくことになる。関連性はますます強くなっていきます。

有園:量子コンピュータのメカニズムをあらためて説明してもらえますか。

村上:今使われているPCやスマホはクラシカルコンピュータで、0と1を使って計算していますよね。それに対して、量子コンピュータは0と1を重ね合わせた状態を扱います。すると、0か1かではなく、「0という状態の世界」「1という状態の世界」が両方存在し、どちらも使って計算できる。だから、10万年かかる計算を数時間でできる、ということが実現するのです。

有園:少なくとも量子状態ではパラレルワールドが存在する。つまり、多世界宇宙が存在するから量子コンピュータが成立する。以前からそうお話ししていますよね。

村上:課題はまだ多いものの、量子コンピュータが実用化に近づくことで、コペンハーゲン解釈よりも多世界宇宙解釈が正しかったと実証されるのでは、と個人的には考えています。

AIやロボットが“労働”を担う未来とは

有園:今後、多くの仕事をAIやAGI、ロボットが担うことになると言われています。どのような世界になるのでしょうか。

村上:生成AIを使いこなせない企業が競争力を失うことから始まり、いろいろな人が雇用の機会を失っていく。キャピタリズムの世界においては、明らかに弊害だと思います。その弊害を最小にするにはどうすればいいか。

 その方法の一つが「核融合」です。核融合炉は燃料が重水素なので、無尽蔵です。放射性廃棄物もほとんど排出されません。実現すれば、エネルギーコストがかからなくなっていく。食料生産を支えることもできます。

 私は新卒で日立電子(現・日立国際電気)に入社後、福島第2原発の開発に携わりました。そのとき、核分裂炉は配管が蜘蛛の巣のように入り組んでいて、安全性の試験では問題がなくても、「完成した技術ではない」という印象を持ちました。原発事故後は、核分裂炉の開発に携わった人間として自分にも罪があると感じ、核融合炉の開発をお手伝いしています。

 エネルギーと食糧の問題が解決すれば、争いも起きなくなります。今ようやく「資本主義の終わりの始まり」が始まったのではないでしょうか。

有園:エネルギーコストがタダになっていく。そうすると、お金のために働かなくてもいい。

村上:あらゆるものの価格がゼロに収斂していく。そうなるには100年、200年かかります。そして、キャピタリズムが終了していくプロセスの過渡期にベーシックインカムもあるのです。

有園:いろんなものがタダになると、人々は“労働”をAIに任せ、芸術やスポーツに励むようになる、というお話でしたね。もしそうなっても、「評価されたい」という自己承認欲求は残るのでは。

村上:有園さんのひ孫ぐらいになれば、それすら気にしなくなるかもしれません。今の私たちは汚辱にまみれた社会に生きていますが、キャピタリズムが終われば、クリーンな世界で生きられる。

有園:では、ぜひ一緒にサイボーグになってその時代まで生きないといけないですね。

村上:汚辱にまみれた私たちがその時代に生きていたら、きっと迷惑ですよ(笑)

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/03/06 09:00 https://markezine.jp/article/detail/44965

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