SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

田中洋が紐解く、ビジネス成功のキーファクター

マーケティング業界のビッグ・フィギュア 石井淳蔵教授が「ブランド」をテーマに筆を執った理由

従来のブランド論と一線を画す書籍『進化するブランド』

田中:本日は、石井淳蔵先生をお迎えして近著『進化するブランド』を中心にお話を伺おうと思っています。同書については、昨年『マーケティング・ジャーナル』で書評を書かせていただいたこともありました。この本を読んで、2つほどびっくりしたことがあります。

 石井先生が岩波新書で『ブランドー価値の創造―』を刊行されたのは1999年ですので、もう25年くらい前ですが、先生はもうこのテーマにはけりをつけられたと思っていたんです。ところが、ブランドというテーマに四半世紀ぶりに取り組まれた――まずこの点に驚いたというのが1つです。

『ブランド 価値の創造 』著石井淳蔵 1999年
『ブランド 価値の創造 』著石井淳蔵 1999年

 もう1つは、驚きというより感服に近いのですが、『進化するブランド』というタイトルをもとに、豊富な企業事例をもって理論を展開されている点。石井先生が同書で提示されているテーゼは、ある意味シンプルなものですよね。「進化型ブランド」と「反進化型ブランド」の2つがあるというのがそれ(同書のテーゼ)だと理解しています。シンプルなテーゼの上に様々な議論や主張が積み重ねられている。このスタイルが新鮮でした。

中央大学 名誉教授 田中洋氏
中央大学 名誉教授 田中洋氏

 さて、ここで私なりに「進化するブランド」とは何か、僭越ではありますが要約させてください。まず、「進化型ブランド」とは、本書の中では日本型ブランドとも言われていますが、「ブランドとしての同一性を保ちながらも、変容し続ける」ブランドのことです(p40より)。

 たとえば、電鉄から百貨店、歌劇団、地域開発と多領域に展開している阪急、食品から衣料、日用品、住宅までをカバーしている無印良品などは進化型ブランドに分類されます。一方、欧米型のブランドは「反進化型ブランド」と呼ばれ、特定の業界内で管理され、明確なコンセプトが与えられています。私自身のブランド論も含めて、従来のブランド戦略論で扱われてきたブランドは、多くがこちらの「反進化型ブランド」ということになります。ただ、石井先生は「反進化型」だからダメだ、というスタンスはとっておられませんよね。その点は注意が必要です。

 これらを前提知識とした上で、先生にまずお聞きしたいことは、本書を書かれた時の最初のモチベーションについてです。何がきっかけで筆をとられたのでしょう?

石井:「マーケティングの世代が変わるな」と感じたことが最初のきっかけです。

神戸大学名誉教授/流通科学大学元学長 石井 淳蔵氏
神戸大学名誉教授/流通科学大学元学長 石井 淳蔵氏

 コトラー先生も「マーケティング3.0」の概念を提唱されていますよね。商品をいかにたくさん売るかではなく、いかに社会課題の解決に貢献していくかが問われている。間違いなく、マーケティングは新しい時代に入ってきていると言えるでしょう。

 社会的課題に敏感で、それを事業活動やマーケティングの中に持ち込み、両輪で収益性も担保している。こういう企業が現代の理想なのかなと思って、これについて書こうと考えました。

 ですが、なかなか思うようにクリアな結論は出てきませんでしたね。紆余曲折がありましたが、問題提起はシンプルでなければいけないだろうということで、2つのブランドスタイルを強引に持ち出すことにしました。やはり、時々批判されますけどね(笑)。

次のページ
ブランドは文化の影響を受けやすい。日本型があっても不思議ではない

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
田中洋が紐解く、ビジネス成功のキーファクター連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

田中 洋(タナカ ヒロシ)

中央大学名誉教授。東京大学経済学部講師。京都大学博士(経済学)。マーケティング論専攻。電通で21年実務を経験したのち、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員、中央大学大学院ビジネススクール教授などを経て現職。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/03/29 09:30 https://markezine.jp/article/detail/45131

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング