データは「Why」軸で分析 完成したペルソナを全社共有し顧客理解を深化
MZ:顧客データの分析・活用を進めてこられて、現在までにどのような収穫がありましたか?
鈴木:はじめは、現在いらっしゃる約570万人のお客様をクラスター分析することからスタートしました。
弊社の基本の商品は、交通系ICカードのSuicaや定期券とクレジットカードの機能が1枚になっている「ビューカード」ですが、その他にもLUMINEでのお買い物がお得になる「ルミネカード」や、JR東日本が提供するサービス「大人の休日倶楽部」専用のカードなど、様々な商品を取り揃えています。大方想像がつくかもしれませんが、それぞれのカードでお客様の特性は大きく異なります。たとえば、ルミネカードの利用者は圧倒的に20~40代の女性のお客様が多く、ありがたいことにロイヤルユーザーも多い。他方、定期券のついているビューカードは30~50代の男性ビジネスマンが利用者層の中心を占めており、ルミネカードとはまた違った使われ方をされています。
そうすると、「カードの使い方」や「属性」などの単純な軸でデータを見てしまいそうになるのですが、クラスター分析をする際に「なぜそのような使い方になっているのか?」という軸でデータを見ていくようにしました。ライフステージの変化や生活の状況により、カード利用の傾向は大きく異なってきます。そうした背景も加味して、顧客理解を深めていきたかったからです。
試行錯誤しながら、何度もクラスターを作り直していった結果、最終的に12個のクラスターに落とし込むことができました。これらに情報を肉付けし、顧客理解用のペルソナとして全社に展開しています。

MZ:マーケティングだけでなく、全社でペルソナを活用されているのですね。
鈴木:はい。営業部門のセールスやマーケティングだけではなく、与信管理などを担う他部署でも顧客理解を深めるために使ってもらいたいと考えています。
たとえば、営業部門では新しいキャンペーンの切り口を考える時に、リスク管理を担う部署ではリスク情報に加えてカードの利用状況を掛け合わせてお客様を評価できるように、といった具合に12個のペルソナを用いることで各部署が共通のお客様視点を持てるようにしていきたいと思っています。
ビューカードならではの付加価値をつけたコミュニケーションを
鈴木:もう一つ、データ分析による大きな収穫があります。お客様のライフステージや生活状況の変化を踏まえて、カード利用の状況を分析していくと、お客様がロイヤルカスタマーとなる際のパターンがいくつか見えてきたのです。
そのうち3つを成長パターンとし、これを基本の型とすることで、同じような属性や状況にいらっしゃる方に、次の利用を後押しするようなコミュニケーションを考えられるようになりました。
MZ:なるほど。実際にどのようなコミュニケーション施策に落とし込まれているのですか?
鈴木:現在実施している施策は、大きく2種類あります。
1つは、クレジットカード会社の定番施策で、利用のステップアップを促していくためのコミュニケーションです。具体的には、公共料金の引き落としなど、日常生活で定期的に発生する固定費の支払いにビューカードを利用していただくためのご案内ですね。クレジットカードの利用額を伸ばすためのベースとなる定番施策として、実施しています。
加えて、JR東日本グループ内にいるからこそお客様にご提供できる付加価値を伝えていく施策も行っています。CRMの観点では、この2つ目の施策のほうが大切でしょう。
たとえば、スポーツがお好きと思われるお客様には、グループ会社のガーラ湯沢が運営する「GALA湯沢スキー場」のご案内をしたり。旅行がお好きと思われるお客様には、JR東日本びゅうツーリズム&セールスと連携して、名湯・秘湯を特集する「地・温泉」の企画に掲載している温泉宿をご紹介したりと、ビューカードならではのオリジナルな体験やコンテンツを拡充し、ご案内する施策も始めています。

JR東日本グループとしての独自施策例(取組先グループ会社:東日本旅客鉄道株式会社、株式会社JR東日本クロスステーション、株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス)