グループ企業に対する提供価値の向上も
MZ:一連の取り組みの中で、苦労したことは何だったのでしょうか?
鈴木:クラスター分析をパートナー会社さんと何度も実施し、試行錯誤しながらペルソナを完成させたことも大変でしたが、一番苦労したのは社内の関係部署やグループ企業と連携しながら施策を組み立てることでした。先ほど、JR東日本グループのオリジナルな体験やコンテンツを作り、お客様にご案内するという施策をご紹介しましたが、これには日頃からグループ企業とコミュニケーションを取っている営業部門との連携が欠かせません。
我々のほうでは「データからこんな傾向が見えたので、〇〇社のこんな旅行商品をご紹介したら良いのでは? △△社のショッピングサイトに掲載されているこの商材はクラスターの♢♢の層におすすめしたら喜ばれるのでは?」と色々なアイデアが浮かんできます。ですが、グループ企業にセールスを行っている営業部門は、年間計画に基づいて計画的に営業活動を行っているため、両者では時間軸や仕事のスタイルが異なるのです。
そのため、最初に施策の狙いを営業担当者に理解してもらい、そこからグループ企業に提案して、実際に施策を実現するまでに数ヵ月単位の時間がかかってしまいます。
MZ:成功体験がいくつかできてくると、営業部門の皆さんの反応も変わってくるのでは?
鈴木:そうですね。地道に一つずつ企画を実施し、グループ企業にとってもメリットのあることだという理解が広まってきたことで、最近は営業部門のほうでも企画を考えて提案してくれるようになり、全社的な取り組みになりつつあります。なにより、グループ企業の方々にも喜んでいただけているとのことで、これは大きな成果だと思います。
グループ企業側では、自社の購買行動しか見えませんから、我々が様々な利用データを分析し顧客理解を深めた上で施策を提案すると、それは彼らにとっては貴重な情報となるわけです。
MZ:グループ企業にとってもwin – winになるんですね。
鈴木:ええ。カードビジネスとは、本来このように消費者と企業をwin -winで繋げていくものだと思います。ビューカードはそのハブ的な位置づけになっていく必要があります。
顧客視点の考え方を全社に広げていきたい
MZ:では、最後に今後の展望をお聞かせください。
鈴木:我々の最大のミッションは、LTVを高めていきながらお客様にビューカードのファンになっていただくことにあります。JR東日本グループが持つオリジナルの素材を活かしながら、ビューカードにしかできない独自の施策をたくさん作っていきたいです。目下の目標は、顧客データの分析により発見した成長パターンに沿って、オリジナルのコンテンツを提供する、この組み合わせの基本の型を確立することですね。
そして、もう少し先に見据えているのは、顧客視点の考え方を会社全体に広げていくという目標です。デジタル戦略部を全社における顧客理解のシンクタンクとして機能させ、実際の取り組みを共有していくことで、事業活動や意思決定に顧客視点やCRMの考え方を反映させていきたいです。
