YOLUのヒットの理由はオンライン×オフラインにあり
日本のヘアケア市場におけるECでの購入率は約12%で、残り9割近くの生活者はオフラインで商品を購入している。またI-neが調査したところ、BOTANISTを店頭で認知した人は全体の57%だったそうだ。
数値からもわかる通り、全ターゲットにリーチし効率よくヒットブランドを作っていくには、デジタルマーケティングだけでなくオフラインでの販売も合わせた両軸が必要になる。
I-neはデジタルマーケティング力と、合計6万5,000店舗の販売実績による販売力の両方を兼ねそろえていることが強みの1つだ。それらがあることで、ブランドローンチ時に大規模テレビCMを実施せずとも、ヒットを生み出せている。
大菅氏が「オフラインでの販売は、店頭で目立ち、商品のことを思い出してもらうことが重要です」と話すように、店頭展開の質・量は重要なキーサクセスファクターとなっている。そのため営業は店頭展開の量と質にこだわっているという。
しかしヘアケア市場、特にプレミアムシャンプーは半年で20~30種類の新ブランドが発売されており、新規参入の壁が非常に多い。棚割りにおいて目立つポジションへの配置ハードルも上がっている中、I-neはオフラインでも自社の存在感を出していくため、デジタルマーケティングのスキルを生かして、営業が有利に商談できるデジタル広告などのプロモーションを仕掛けてきた。
ブランド開発で意識すべきこと
デジタル広告と店頭展開がうまく連動する副産物として、広告の投資効率の良さがある。デジタルを中心にプロモーションをすると、ターゲットを絞って情報を届けられるため、ベンチマークにしているブランドよりも、ファネルの転換率が高い。
YOLUでは、店頭展開とデジタル施策で発売初月からターゲット年代の認知率は20%以上、全年代への認知率も10%程度を獲得できたそうだ。これは大規模テレビCMを打つ場合と同等の効果であり、購入者を最大化できた結果の一因にもなっていると大菅氏は語った。
大菅氏は最後に、ブランド作りで意識すべきことは、サイエンス・クラフト・アートの3つだとまとめた。「私たちが日常で仕事をしているなかでも、週1回以上は出てくる言葉です」と話す大菅氏からは、ミッションや意識するべきキーワードが実務でもしっかりとなじんでいる様子がうかがえる。
アートは「こういう課題を解決したい」とパーパスや世界観を作りたい創造性や感性、サイエンスは市場分析や消費者調査の数字を扱うスキル、クラフトは戦略における先の戦術まで実現させる、質の高い行動を指している。
自社の強みとして挙げていたブランド創出力・IPTOS・OMOも、それぞれサイエンス・クラフト・アートの要素の組み合わせと言えられそうだ。最後に大菅氏は「今後もブランド構築や生活者とのコミュニケーションに磨きをかけていければ」と話し、同セッションを締めくくった。
