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【特集】進化するテレビマーケティング、現在の選択肢

テレビでもスマホでも生活者は意識しない、スクリーンニュートラル時代のプランニング

テレビ広告の中長期的効果

──今後マーケティングにテレビを活用していくために、広告主の立場で意識すべきことや考えるべきこと、認識をアップデートすべき点があれば教えていただけますか。

 ブリーフの際は、最初からメディアごとの予算配分を決めておくのではなく、目的に合わせてプランニング側が提案できる余地を残していただけると良いと思います。

 また、効果測定の面で言うと、デジタルの隆盛以降、ラストクリックベースに寄りがちでしたが、MMM(Marketing Mix Modeling)で全体を統合して効果を測定することが多くなってきています。

 この考え方は必要なのですが、1つ落とし穴があります。MMMでは、モデルにもよりますが短期的な効果に偏る傾向があり、どうしてもデジタルの効果が高く出て、テレビの効果は低くなる傾向にある。その結果、テレビの投資を減らす判断になりがちです。MMMでは顕在層の動きが直接的な貢献として数字に表れやすい。たとえば、サーチのROIが高いのは、既にデマンドを持っている人が購入しているのですから、当然と言えます。

 そのため、MMMの評価に従ってデジタル偏重になると、その商品を欲しいと思ってもらうための態度変容のプロセスが抜け落ちてしまう恐れがあります。以前、あるクライアントさんが予算の大半をデジタルシフトしたのですが、結果として売上があまり伸びませんでした。ブランド間のスイッチは起きたのですが、その商品カテゴリ自体を欲しいと思う母数が増えないので全体のユーザーボリュームは変わらないという現象が起きていました。

 そもそも、そのカテゴリを使っていない人にアピールするのは、ターゲティングしすぎない、テレビをはじめとするスクリーンメディアが得意な領域です。ただしこういったアプローチは短期的には数値に表れにくく「ブランディング」と一括りにみなされ、売上には貢献しないかのように語られがちです。「ブランディング」と言うと売上になるのか疑問視されることがありますが、中長期で見ればブランディングや好意度の向上は売上につながっていて、インダイレクトなROIと言えます。

 そこで当社ではFFM(Full Flow Modeling)というモデルを使って、中長期的な効果も可視化しています(図表2)

図表2 FFMモデル
図表2 FFMモデル

 この視点を持たなければ、顕在層ばかりをターゲティングする焼き畑農業になってしまいます。多くのクライアント様は、これまでROIを求めてロウワーファネルに投資を集中してきましたが、全体数が広がらないことに気づき、投資の仕方を変え始めています。

 また、手法を問わず数値分析だけに依存せず、1つの参考として捉えることが大事です。たとえば、ユーザーを広げるという観点で考えれば、検索広告もクリックベースではなくインプレッションシェアで運用するべきです。顕在ニーズのない人にも広告を見せることになるのでROIは下がりますが、目的には適っていると言えます。

 数字だけでなく、本来やりたいマーケティングの目的と実態が合っているか見直す必要があるのではないでしょうか。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

慎 芝賢(シン ジヒョン)

フリーカメラマン 日本大学芸術学部写真学科卒業後、朝日新聞出版写真部勤務。 2014年フリーカメラマンに。雑誌・書籍・新聞・web媒体を中心に撮影を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/05/28 09:30 https://markezine.jp/article/detail/45487

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