見透かされる時代に、企業が問われる「本気」
──応援消費が老若男女に広がる昨今、マーケティング施策のひとつとして検討する企業も増えてきていると思います。企業は応援消費を利益獲得の手法として捉えてよいのでしょうか。
水越:あくまで営利目的の企業である以上、最終的に自社にメリットや利益が生まれる設計をするのは当然のことだと思います。消費者側も、応援消費には企業の利益がともなうことを意識しています。だからこそ、応援消費で売上を出そうとしていることが見え透いていたり、それが強すぎたりすると、炎上や批判の原因となってしまいます。バランス感覚が問われるマーケティング手法と言えるでしょう。
──消費者への投げかけ方が難しいように感じます。企業が応援消費に期待する際、ポイントや気をつけるべき点はあるのでしょうか。
水越:消費者に「本気なんだな」と感じさせることでしょうか。実態がともなっていることは大前提として、しっかりと思いや意図を伝えられるかが問われます。キリンの例で言えば、「晴れ風」以前にも継続的に被災地支援などを行っていて、現地の食材を使用したり、現地で広告素材を撮影したりと、マーケティングを徹底していた点が成功の秘訣と考えられますね。
一過性のブームか、今後の主流か。応援消費のこれから
──応援消費は一過性の流行ではなく、今後も消費者へ浸透していくものだと思いますか。
水越:応援消費は既に、マーケティングにおける「メガトレンド」のひとつになっています。呼び方や手法は都度変わっていくかもしれませんが、今後も広がりを見せるでしょう。トレンドには波があり、今後も災害で支援が必要になるタイミングに大きく取り上げられ、その後下火になる可能性はあります。しかし、そこからダウントレンドになることは考えにくく、じわじわと機運は高まっていくことでしょう。
──企業では今後、どのように取り入れられると思いますか。
水越:欧米では「ブランドアクティビズム」の流れが強まっており、社会問題や政治問題に積極的に対峙し、解決のためのアクションをとる企業やブランドが増えていくと考えられます。日本は社会貢献を大々的に公表しないスタンスの企業がまだ多く、まずは差し障りの少ないところから、緩やかな広がりを見せていくでしょう。大企業はリスクを鑑みて大きな施策は打たないかもしれませんが、中小企業やベンチャー企業はむしろ大胆なアクションをとるところが出てくるかもしれませんね。
欧米と比べて緩やかといえども、日本でも応援消費の拡大は止まることはないと考えています。モノにあふれた世の中で、消費者心理や価値観が変化していくなか、応援消費はますます存在感を強めていくことでしょう。