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600以上のデータで紐解く!マーケターが把握しておきたい、生活者のメディア接触の変化【お薦めの書籍】

 コロナ禍を経て、生活者のメディア接触態度は大きく変わったといわれます。しかし「変わっている」という認識はあるものの、数字ベースで領域や媒体ごとの動きを深く把握できているわけではない、という方も少なくないのではないでしょうか。本記事では、多数のデータを基に、生活者のメディア接触におけるトレンドや変化を掘り下げる書籍を紹介します。

コロナ禍で変化した生活者のメディア事情

 今回紹介する書籍は電通メディアイノベーションラボ/電通総研の『情報メディア白書2024』(日本実業出版社)。情報メディア産業の最新動向の分析や、600を超える統計データを収録しています。

『情報メディア白書2024』 電通メディアイノベーションラボ/電通総研(編集)ダイヤモンド社 17,600円(税込)
『情報メディア白書2024』電通メディアイノベーションラボ/電通総研(編集)ダイヤモンド社 17,600円(税込)

 『情報メディア白書』は、情報メディア産業を13章にわけ、各産業の動向の分析や解説、構造図やジャンルごとのデータを掲載したもの。加えて、情報メディア関連データやトレンド・注目ポイントを考察した特集も収録されています。

 市販版としての刊行31回目となる本書では、まず特集として「コロナ禍前後 揺り戻しと定着 二極化が進むメディア利用行動」をテーマに取り上げています。電通メディアイノベーションラボ 統括責任者/電通総研 名誉フェローの奥律哉氏は、生活者の1日当たりの自宅内メディア接触時間データを用いて、コロナ禍に突入した2020年を境に起きたメディアの2極化を指摘しました。

2020年を機に加速した2極化とは

 2020年、コロナ禍に入ったことで生活者のメディア接触時間は2019年までと比較して大きな伸びを見せました。本書で紹介されているビデオリサーチのデータによれば、2019年の1日当たりの自宅内メディア総接触時間は平均して300分未満に。一方、2020年は前年からプラス1時間以上となる360分超でした。2021年以降は徐々に総接触時間の平均は縮小しているものの、300分以上を維持しています。

 そんな中、奥氏は2020年を境とした「テレビ」「ネット【PC・タブレット】」「ネット【モバイル】」の動きに着目。「テレビ」は2021年以降接触時間を減らしており、コロナ禍前の水準を大きく下回るようになっています。反対に、「ネット【PC・タブレット】」「ネット【モバイル】」は、それぞれ接触時間の水準を保ち続ける結果となりました。

 奥氏は、この3者の動向を「本来緩やかに起こるべき変化が、コロナ禍を契機としてダイナミックに生じた」と分析しました。加えて、コネクテッドTVの普及を背景に、テレビ画面でのネット視聴を指す「テレビ動画」が堅調に接触時間を伸ばしていることも紹介しました。

数字から見る、世代間におけるメディア接触の大きな差

 テレビとネットの動向の差は、主要メディア接触率のデータにも如実に表れています。テレビの接触率は2004年に86.5%とピークを迎えた後は下降し、2023年には57.2%となりました。一方でインターネットの接触率は1998年以降右肩上がりに推移し、コロナ禍に入った2020年には75.7%に。このタイミングでテレビの接触率をインターネットが上回り、前述の変化が見て取れます。

 奥氏はこの状況を「広告費のトレンドとよく似ている」とし、メディアのリーチ力を反映していると指摘しました。電通「日本の広告費」の媒体別広告費によれば、「地上波テレビ」「テレビメディア」をはじめとした多くの媒体校の広告費が横ばいや下降傾向にある中、「インターネット広告」はコロナ禍を挟んでなお大幅な右肩上がりを見せています。

 さらに奥氏は、世代別に自宅内映像メディア接触時間を分析。若年層の接触時間シェアに注目し、「テレビリアルタイム」など放送経由のシェアは半分に満たないことを示しました。対して50~69歳の放送経由のシェアは男女ともに85%を超え、ネット経由は12~13%ほどです。一方で12~19歳の若年層はネット経由が55.2%とシェアの半分以上を占め、世代によって非常に大きなメディア接触の差が出ています。

【メディア接触時間のうち、放送経由:ネット経由のシェア】
12~19歳 43.2%:55.2%
男性20~34歳 44.5%:54.8%
男性35~49歳 66.2%:32.6%
男性50~69歳 85.7%:13.4%
女性20~34歳 55.4%:42.6%
女性35~49歳 76.7%:21.8%
女性50~69歳 87.1%:12.0%

 これらのデータから奥氏は「世代間でこれだけの差が生まれていることを意識する認識することが重要」と述べました。合わせて、電通メディアイノベーションラボが若年層を対象に実施したインタビューで「目と耳が暇なのは耐えられない」という意見が複数寄せられたことや、「テレビの放送時間に自身の行動を合わせること」「長尺であること」などの要因から敷居が高いと捉える若者が多いことも紹介しています。

 本書では、この他に「乳幼児・小学生のメディア利用行動」「生成AIがクリエイティブに与える影響」といったテーマを特集。今注目すべきトレンドや「ラジオ・テレビ」「音楽」「広告」といった13領域のデータなど、情報メディアに関わる方が把握しておきたいトピックが詰まった一冊です。データから最新のメディア動向や消費者の変化をつかみたいマーケターは、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

本記事は株式会社電通からの献本に基づいて作成しております

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/05/21 08:30 https://markezine.jp/article/detail/45676

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