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テレビはどう生き残るか~鍵を握る「インプレッション取引」を成功させる仕組みとは~

テレビCMの価値を再定義するために不可欠なのは、デジタル広告と同様の「ターゲットCPM」

周辺ターゲットも勘案した「ターゲットCPM」とは?

 そこで、第2回でご紹介した自動車メーカーの広告キャンペーンを想定した例に対して、メインターゲットだけでなく周辺ターゲットも勘案したターゲット設定を図表3のように行います。デジタル広告のように効率の一面性だけでターゲットを矮小化することなく、テレビCMの持つ「本当の力」を最大限に活用するためです。

周辺ターゲットも勘案したターゲット設定と各セグメントへの「ターゲットCPM」設定例
【図表3】周辺ターゲットも勘案したターゲット設定と各セグメントへの「ターゲットCPM」設定例(クリックすると拡大します)

 メインターゲットに加えて周辺ターゲットを6区分、さらにターゲット外も入れて8つのセグメント(t1~t8)を設定します。これらのセグメントはAND条件だけでなく、OR条件、NOT条件も混在させながら設定しています。繰り返しとなりますが、率でなく、実数で捉えているために重複のないセグメントとして把握することが可能となります

 そして、この8つのセグメント(ターゲット分類)に対して個々にCPMを、つまり「ターゲットCPM」を設定していきます。

 ターゲットCPM(TCPM)は、元々はデジタル広告の総費用を広告主が求めるターゲットオーディエンスへのインプレッション数(1,000回単位)で割ることで求められる評価指標の一つです。しかし、米国ではCTV広告やデジタル広告をバイイングするための主たる指標となってきています

 それを、地上波のテレビCMでも同様に評価できるようにします。

 当然、それぞれのセグメントをどう評価するのかは(いくらのTCPMとするのかは)、広告主によって、あるいは同じ商品やサービスであっても、そのテレビCMを使用する目的などによって異なることになるでしょう。

 この例での「周辺ターゲットを勘案したTCPM」を整理すると次のようになります。

ターゲット分類 想定人数(※1) ターゲットCPM
t1 メインターゲット 70万人 5,000円
t2 新車購入検討+アウトドア好き 70万人 3,000円
t3 新車購入検討+20~40代男女 80万人 2,500円
t4 新車購入検討のみ 80万人 2,000円
t5 アウトドア好き+20~40代男女 350万人 1,500円
t6 アウトドア好き 410万人 1,000円
t7 20〜40代男女のみ 1,700万人 800円
t8 ターゲット外 1,940万人 1円
(※1)各想定人数は連載第2回の「図表3」より。関東エリア4,200万人で独自試算。

 メインターゲットの70万人にはTCPM5,000円と最も高く設定していますが、それ以外の周辺ターゲットに対してもメインターゲットに近い順(価値が高いと考える順)に、TCPMを個別に設定していきます。総量評価するためにターゲット外も1円としています。t2からt7までの周辺ターゲットは合計すると2,190万人にもなります。

「テレビ×ストリーミング」時代の評価の考え方

 リニアTVにおけるPUT(総個人視聴率)は継続的に低下し、代わってストリーミング視聴が大きく増加、視聴の断片化は国内でも進んでいます。テレビ広告は放送によるテレビCMだけではなくなり、ストリーミングによるCTV広告との共存が避けられません。また、共存できなければ生き残れません

 もはや、テレビCMがメイン(主)でデジタル広告はあくまで補完(従)だった時代は終わり、どちらが主でどちらが従なのか? というのは広告主によっても、業種などによっても異なってきています

 米国では「マルチカレンシー」「インプレッション取引」、さらに「コンバージドTV/コンバージェントTV(※2)」がテレビ広告の変革のキーワードになっています。

(※2)デジタル領域のオーディエンス・ターゲティング技術をリニアTVとストリーミングのコンテンツや広告に融合させていくこと

 「テレビ×ストリーミング」時代の評価の考え方(「ストリーミング×テレビ」時代なのかも知れませんが)を図表4にまとめました。リニアTV(地上波テレビ)、ストリーミング(CTV広告)、デジタル広告(PC/スマホ)に分類しています。

「テレビ×ストリーミング」時代の評価の考え方
【図表4】「テレビ×ストリーミング」時代の評価の考え方。テレビCMを総量評価で捉えることは広告主にとっても重要なことである。(クリックすると拡大します)

 広告キャンペーンが計画される際、メインターゲットは必ず設定されることでしょう。そして、その特定セグメントに対してはTCPMが想定されます。この際、同一コンテンツが同一デバイスで見られるなら、それは等価TCPMであることが理にかなっています。もちろん、ストリーミング側(CTV広告)はUGC(ユーザー生成コンテンツ)でないプレミアムコンテンツであることが前提です。現に米国での基準はそうなってきているようです。

 プラットフォームやターゲティングの強弱にもよりますが、CTV広告のTCPMは概ね2,500〜7,000円であると考えています。当然、テレビCMはすべてのインプレッションをそのTCPMで取引することはできませんが、そこに含まれるメインターゲットへのインプレッションは同程度のTCPMで取引されてもよいはずです。そこがきちんと評価できないため「ディスカウント」(テレビCMの価値の低下)が発生しています。

 そして、さらにテレビCMには周辺ターゲットへの広告価値も期待できます。それらのインプレッションもTCPMで評価し、取引できる仕組みが必要となります。

次のページ
総量評価のインプレッション取引でテレビ局は増収する

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テレビはどう生き残るか~鍵を握る「インプレッション取引」を成功させる仕組みとは~連載記事一覧

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役
ベストインクラスプロデューサーズ 取締役 ファウンダー
トレンダーズ 社外取締役

1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

株式会社プログラマティカ 代表取締役社長

関西学院大学卒。広告会社で営業部門を経験後、経営及び人事部門でデジタル領域への投資・事業戦略や組織・制度変革等を担務する。メディア部門を担当後、デジタルエージェンシーを経てコンサルティング会社に経営参加。大手広告主に対するマーケティング・コンサルティング業務等に従事する...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/26 15:22 https://markezine.jp/article/detail/46009

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